「数量限定」「本日限り」に財布の紐がゆるむのはなぜでしょう? 【ビジネスにすぐ効く心理学】連載第1回
公開日:2018/12/16
仕事そのものは嫌いじゃないけど、職場の人間関係や、お客さんとのやり取りが億劫で、会社に通う足取りが重くなる…。そういう気分になったことはありませんか? ビジネスでも中心となって動いているのは人間ですから、そこにはいろいろな心の働きが絡み合います。実際にビジネス分野で急速に“心理学”の存在感が増しています。
「ちょっと理屈っぽい?」と思っていた心理学を、ビジネスでの「あるある」な場面に重ね合わせてわかりやすく解説してくれるのが『ビジネス心理学 100本ノック』(榎本博明/日本経済新聞出版社)です。本書から、あなたが今すぐ役立てられそうなトピックをご紹介します。
■数量や時間を限定されるとつい買ってしまう。【心理的リアクタンス】
「セールは本日まで!」の呼び込みに惹かれて勢いで買ったものの、後で考えたら大してお買い得でもなかった、という経験はありませんか? あるいは、「1日10個限定販売」「先着100名様」というフレーズに心が動かされたことはないでしょうか? ここで人の心に働いているのが、心理学者ブレームが提唱した「心理的リアクタンス」です(本書176ページ)。
これは、自由を制限されたり奪われたりすると、自由を回復しようとする心理が働く、というもの。選択の自由を奪われることに対して、私たちは強い心理的な抵抗をもちます。そして「なくなってしまうかも」と思うと買いたい衝動が高まり、慌てて買ってしまうのです。
この際に頭の中に往来するのは「限定しなければならないほど特別な商品なんだ」という心理と、「今すぐ買わないとこの値段では買えなくなる」という心理です。出遅れると「手に入れる自由」を失ってしまうと思い、その自由を行使しようと焦りが生じます。
季節限定、会員様限り、品切れ中、予約殺到、生産が追いつかない…こんなフレーズにも心理的リアクタンスを引き起こす要素があるので、「限定効果」を狙うようなメッセージを感じたら、お財布の紐をキッチリと締め直したほうがよさそうです(逆に売ることが仕事の方は、この作用をうまく活かせるかもしれませんね)。
本書は、ビジネスだけではなく生活の折々でも気になる心理学の基本と、それを活かした実践的ヒントを紹介します。心理学の正しい知識は、ビジネスや仕事であなたの武器となり、疲れた心にはそっと寄り添ってくれるもの。本書のページをめくって、そんな心強い相棒を得てみませんか。
文=田坂文