「もっとも当たるエコノミスト」が予測! AIと共生する未来とは?
公開日:2018/12/19
「経済や社会を根底から揺るがすような大きな変化が起ころうとしています。“AIによる自動化”という10~20年周期の中期の波と、“少子化による人口減少”という70~100年周期の長期の波の2つの大きな波が押し寄せようとしています」
本書『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』(中原圭介/東洋経済新報社)は、AIと人口減少による変化とその脅威を描き出した1冊だ。著者中原圭介氏は、統計データや技術トレンドの裏付けのもと人口減少を「過酷な未来」、AIを「雇用の脅威」と断言し、この2つの大きな波が社会システムを揺るがし民主主義さえも脅しかねないことに警鐘を鳴らす。
AIは“深層学習”という技術革新を経てビッグバンを迎えた。好況期の現在は人手不足解消の切り札と目されているが、2020年ころには雇用を脅かすほど急速に普及すると著者は予測する。AIの進化は研究者自らが“不気味”と評すほど底知れないもののようだ。次のビッグバンを狙う技術革新が実現されれば、ほとんどすべての職種が脅かされるという。
企業にとっては、AIによる自動化工場、小売業の無人店舗、事務の効率化など、人員削減による生産性向上は避けて通れない。問題はその果実を誰が手にするかだ。すでに長期にわたりITによる生産性向上がもたらされたが、生み出された富は資本家に集中し、働き手の取り分は下がる一方なのだ。働き手の意欲喪失は、政治不信を通して政治の劣化を招く。AIはこれを加速し、すでに世界中でうねりをあげるポピュリズム政治の台頭は、民主主義の脅威となると著者は指摘する。
日本はさらに人口減少問題も抱えている。2008年にピークを迎えた人口は減少を続けており、現在は年40万人、品川区や町田市などが毎年消えていく規模だ。さらに2040年ころには年70万人となり、香川県や和歌山県が消えてなくなるような規模になるという。原因は高齢化と少子化、さらに地方では東京への転出だ。社会負担の増大、増税、所得の低下、消費の減退、とよく耳にする負の連鎖は拡大する一方なのだ。
このように著者は押し寄せるふたつの脅威を本書に示した。
・AIのさらなる技術革新は雇用不安を招き富の分配の偏りを助長する
・人口減少は社会保障制度の崩壊と経済の衰退を招く
そして著者は日本の処方箋として下記を挙げる。
・少子化の原因である東京一極集中に歯止めをかける
・定年制度を無くし高齢者を社会参加させ社会負担を抑制する
・産業の進化を緩めるために税制などでAI活用を抑制する
・一方で医療など社会保障にAIを積極活用しコストを下げる
脅威が具体的な課題として示されたことは、見えないお化けが見えたようなもの。むやみに恐れず行動を取ることだ。行政・企業・個人も改革は待ったなしなのだ。著者はAIと戦わずに共生せよという。そのためには我々は“人間が複雑であること”に努力すべきだという。考え方、感情、テクニック、そして運…ビジネスを動かす個々人の資質は複雑であり、AIが取って代わることはできないからだ。
文=八田智明