「非協力的な夫に怒り」「高額な治療費に震える」——笑って泣ける不妊治療漫画
公開日:2018/12/23
不妊治療——。すぐに子どもを授かった夫婦や、子どもを望まない夫婦にとっては、縁遠い言葉かもしれません。しかし、近年晩婚化が進むとともに、不妊治療をしている夫婦も増加傾向にあります。不妊治療は、誰もが最初は、「まさか自分たちが」と思うものでしょう。しかし、そのまさかを乗り越えていかなければいけない現実が、突然目の前に立ちはだかるのです。そんな心揺り動かされる不妊治療をテーマにした漫画をご紹介します。著者が経験談を踏まえて語ってくれているので、今まさに不妊治療で悩みを抱えている方にもおすすめです。
■妊活は忍活!? 赤裸々に描かれる5年間の不妊治療の道
30代前半に結婚し、36歳で不妊治療を始めた著者。初めての不妊治療に戸惑いつつ、タイミング法、人工授精、顕微授精と治療を進めていく様子が赤裸々に描かれているのが、『私が不妊治療をやめたわけ』(海原こうめ/イースト・プレス)。
治療の中でのリアルな体験談やお金のこと、さらには、素直な心の動き、期待や失望、葛藤などがテンポよく描かれています。本書の中には、仕事のスケジュールを調整して、なんとか病院に通う妻がいる一方、仕事で疲れたと非協力的になってしまう夫という、リアルな一面も…。妻のさまざまな感情が読者にも伝わってくる1冊です。不妊治療に向き合った、笑いあり、涙ありの5年間の記録。その中で1組の夫婦が出した結論とは。不妊治療の一部始終を軽快に描いているコミックエッセイです。
■ときには涙し、ときには笑い合いながら治療と向き合った妊活記録
じんわり泣けて、くすりと笑える不妊治療のコミックエッセイが、『コウノトリのかくれんぼ』(ポチ子/セブン&アイ出版)です。ゆるいタッチのイラストで人気のブログ「ポチ子の不妊漫画」を書籍化したものです。
本書は、手探りでの妊活1年を経て、専門クリニックへ通うようになった著者の3年間の通院記録(現在も通院中)と夫とのくすりと笑える日々が綴られています。治療についての解説や、ためになる知識を教えるものではありません。けれども、ときには涙しながら夫と助け合い、笑い合いながら治療に向き合う姿に、きっと心が温かくなり、一緒にがんばる勇気をちょっとだけもらえる本です。治療中には前向きになれないときもあるでしょう。そんなときは、落ち込んでも良いのです。気分が変わったら、また一歩ずつ歩いていけば良い、そんな気持ちにさせてくれる1冊です。
■山あり谷あり、涙あり笑いありの妊娠出産コミック!!
38歳で結婚した漫画家・水玉ペリさんの妊娠・出産の様子を描いた『がけっぷち出産ブンブンマーチ~3歩進んで2歩下がる高齢・不育ロード~』(秋田書店)。仕事が忙しく不規則な暮らしを続ける女性が多い中、いわゆる晩婚ゆえの悩み、「子どもをどうするか」という問題に突き当たります。昨今の晩婚化の流れで、このように悩む夫婦は確実に増えているのではないでしょうか。
本書では、話し合いの末、妊活を開始したのは、結婚式後8カ月目のことでした。自己流の排卵予測では結果が出ず、基礎体温を測ること2カ月後、ついに、妊娠の兆候が…!? 男性の方も読んでおくべき1冊です。流産体験や高齢での妊娠・出産にまつわる悩みや葛藤が描かれているので、とても参考になる。
■手塚治虫の愛弟子とその妻が日本に「夫婦の絆」を問いかける1冊
泣けるコミックエッセイとして知られる『不妊治療、やめました。~ふたり暮らしを決めた日~』(堀田あきお&かよ/ぶんか社)。突然の子宮内膜症手術や度重なる人工授精、流産…。10年にも及ぶ不妊治療の末に最後に2人が選んだのは、「ふたりで生きていく」ということ。
けんかをしながらも一緒に戦う、戦友のような関係の2人は、どんなに辛いときも、ふたりで上を向いて歩いてきたからこそ、この決断ができたというストーリーが描かれています。不妊治療を続けているとさまざまな葛藤が駆け巡ると思いますが、「不妊治療は決して不幸なことではない、治療は大変だし、悩むことも多いけど、良い体験だったし、そこから見えてくるものがある」、そう思えることでしょう。
■妊娠したいすべての人へ。必読の妊活本!
「天からの授かり物」と言われる赤ちゃん。ところが、最近では、「妊活」という言葉も生まれ、子どもは「授かるのを待つ」ものではなく、「授かりに動く」ものに変わってきました。そんな授かるための動き方を基本から教えてくるのが『妊カツ! 妊娠したいすべての人へ』(あらいきよこ/小学館)です。
著者は、15年にわたって不妊治療を経験し、3年前に自然妊娠にて女児を出産しました。その経験をコミックエッセイの中でリアルに紹介しています。また、自然妊娠するための体作りから不妊治療までの妊活基礎知識など、最新情報を徹底取材し、記事にて解説しています。妊活初心者の方はもちろん、不妊かもしれないと悩む方も、赤ちゃんが欲しいと思うすべての人が読むべき1冊かもしれません。
不妊治療は、夫婦の数だけ、さまざまなエピソードがあります。ひとつとして同じものはないのではないでしょうか。だからこそ、多くの不妊治療に関する本を読み、夫婦の中でひとつでも多くの選択肢を見つけていただければと思います。涙なくしては読めないものもありますが、笑いを交えながら、ときには明るい気持ちにさせてくれる作品もありますので、悩んだら、まずどれかを手にとってみるのはいかがでしょう。そこからあなたの不妊治療の第一歩が始まるかもしれません。
文=桜子