温泉、海外…旅先でついつい財布の紐がゆるんでしまう心理学的理由 【ビジネスにすぐ効く心理学】連載第6回
公開日:2018/12/21
仕事そのものは嫌いじゃないけど、職場の人間関係や、お客さんとのやり取りが億劫で、会社に通う足取りが重くなる…。そういう気分になったことはありませんか? ビジネスでも中心となって動いているのは人間ですから、そこにはいろいろな心の働きが絡み合います。実際にビジネス分野で急速に“心理学”の存在感が増しています。
「ちょっと理屈っぽい?」と思っていた心理学を、ビジネスでの「あるある」な場面に重ね合わせてわかりやすく解説してくれるのが『ビジネス心理学 100本ノック』(榎本博明/日本経済新聞出版社)です。本書から、あなたが今すぐ役立てられそうなトピックをご紹介します。
■商品・サービスや状況によって、支出可能額が異なる【心理的サイフ】
高級ブランドの鞄をいくつも持っているのに、飲食費に高いお金をかけるなんてあり得ないという人がいます。好きなアーティストのコンサートは1万円を超えるチケットでも手に入れようとするのに、旅行先の宿代はやたらとケチるという人もいます。このような現象を説明するのが、心理学者・小嶋外弘氏の唱えた「心理的サイフ」という考え方です(本書198ページ)。
物理的なサイフはひとつでも、心の中にはいくつものサイフがあり、どのサイフから出すかによって高過ぎると感じることもあれば満足することもある、というのがその理論です。たとえば、「平日ランチ用」のサイフにとって2000円のランチはちょっとした贅沢です。でもこれが旅行先の昼食だったら、3000円を超えても構わないという人は多いのではないでしょうか。
旅行という非日常的で、貴重な体験となる機会であれば、心理的サイフの許容額が変わってくるのです。「彼女とのデートだったらディナーに1万円払っても楽しいけど、アノ上司との飲み会に会費3000円も取られるなんて…」と愚痴をいうのも、心理的サイフの効果ですね。
本書は、ビジネスだけではなく生活の折々でも気になる心理学の基本と、それを活かした実践的ヒントを紹介します。心理学の正しい知識は、ビジネスや仕事であなたの武器となり、疲れた心にはそっと寄り添ってくれるもの。本書のページをめくって、そんな心強い相棒を得てみませんか。
文=田坂文