クリスマスはキリストの誕生日ではない!?「禁断の実」はリンゴじゃない?【意外と知らない聖書の世界】
公開日:2018/12/24
8万近いフォロワーを抱える大人気のTwitterアカウントがある。それは有名タレントでもインフルエンサーでもない。
そのアカウントを運営するのは、東京・世田谷区にある「上馬キリスト教会」であり、同教会員の2人がツイートを発信しているのだ。この2人の独特でユーモアに溢れた超絶ゆるゆるツイートが大きな話題を呼び、ついに書籍を発売!
『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』(上馬キリスト教会/講談社)は、普段聖書に触れる機会のないノンクリスチャンたちのために、タイトル通り「ゆるーく、ざっくり」聖書について紹介している。聖書といえば堅苦しく神聖なイメージだが、本書を読むとクスッと笑えて親近感を抱くだろう。その世界観をちょっぴりご紹介したい。
■クリスマスに“ついでに”祝われるイエス様の生誕
クリスマスは何の日?と尋ねると、「イエス・キリストの誕生日!」と答える人もいるだろう。
ところが、12月25日がイエス様の誕生日だとは聖書に一言も書かれていない。さらに、もし本当に12月にベツレヘムの馬小屋で誕生していたとすると、きっとイエス様はマリア様とともに凍死の危機にさらされていたはずだ。
では一体、イエス様の誕生日はいつなのか? その答えはいまだ出ておらず、12月25日にローマで行われる一年で一番大きな冬至のお祭りの“ついでに”イエス様の生誕を祝うようになったのだという。
「そんな適当でいいのか!?」と思ってしまうが、実際のところそれで問題はないらしい。
多くのクリスチャンも「細かいことはいろいろあるけど面倒だからとりあえず誕生日ってことでいいよね」というくらいに思っています。
こうしてクリスマス=12月25日という文化が、ローマから遠く離れた日本でも定着したのだ。
■禁断の実はリンゴじゃなかった? 決着のつかない果実論争
私たちがよく知る聖書の物語に「アダムとイブ」がある。
楽園で暮らすアダムとイブが蛇にそそのかされ、神様に「決して食べてはいけない」と言われた果実を口にしてしまい楽園を追放される、というものだ。
この物語を聞いた時、「禁断の果実=リンゴ」を思い浮かべるだろう。しかしこれも聖書には「リンゴ」と明記されていない。本書によると、聖書学者の間でも議論は分かれており、リンゴ説の他にイチジクやブドウ、さらにはトマト説まであるのだとか。その論争にはいまだ決着がついていないそうだ。
果たして、アダムとイブが食べた果実とは、一体何だったのだろうか…。
■「目からウロコ」は聖書由来の慣用句だった
「何かをきっかけに、急に物事が理解できること」という意味をもつ慣用句「目からウロコ」。実はこれ、聖書のある出来事に由来するのだそう。
キリスト教徒を迫害していたサウロという男が神の怒りに触れ、突然目が見えなくなってしまった。その後、アナニヤという神に忠実な男がサウロの頭に手を置くと、奇跡が起きた。
サウロの目からウロコのようなものがボロッと落ちて、彼の目は再び見えるようになりました。
「目からウロコ」という慣用句は、物理的に目からウロコのようなものが落ちたことに由来していた。キリスト教が伝来して500年も経つと、私たちが何気なく使う言葉の中に、聖書に由来した言葉が自然と根づいているものだと気づく。
まさに目からウロコである。
■意外と身近だった聖書の世界
クリスマスパーティーの数日後に神社へ初詣に出かけるほど、私たちは宗教観のおおらかな国に生きている。それ故に、それぞれの宗教が一体どんなストーリーをもっているのか、知る機会があまりないのかもしれない。
本書は、そんな私たちのために「ゆるーく、ざっくり」と、聖書の世界を紹介する。ユーモアに溢れた文章は、私たちがもつ堅苦しいイメージを覆し、キリスト教に縁のない人でも十分に楽しめるはずだ。
本書を読めば、きっと読者も明日誰かに教えたくなるだろう。
「イエスって、実は大酒飲みの大食漢で、お腹が空くと機嫌が悪くなるらしいよ」と。
文=和泉洋子