「ワイン初心者はフランスワインからスタートするべき!」 大人気ワインマンガ『神の雫』からの神アドバイス
公開日:2018/12/28
年末年始はワインを飲む機会が増えるシーズンですね。でもワインに興味はあるけれど、「ワインという小むずかしい感じの飲み物」に若干の心理的ハードルを感じているかたが多いのではないでしょうか?
確かにワインには、ナンチャラ1級などという格付けがあったり、「巨峰」や「マスカット」とは違う、聞き覚えのないぶどう品種がいろいろ使われていたりします。そして高級フレンチレストランでは、大ぶりのグラスを傾けながら「このワインはブルゴーニュの特級畑だな」などと鼻をふくらませてうんちくを語るワインマニアもいたりして、“知らないやつは飲む資格なし”的なイメージがつきまとっています。
でも、それは違います。全然違うと思います。そもそもそんな小むずかしい知識がワインを楽しむためにほんとうに必要なのでしょうか? 私たちは『神の雫』というワイン漫画を2004年から続けています。この漫画を始めたきっかけは、ある1本のフランスワインに心から感動して、ワインのとりこになったからです。趣味が高じて、とうとう仕事にしてしまったわけなのですが……。
大事なことは「ワインを楽しみたい」という、純粋な好奇心
この『神の雫』はテレビドラマにもなり、韓国、中国、台湾、アメリカ、そしてフランスなど世界中で翻訳版が出版され、累計部数は1000万部を超えました。実は、『神の雫』がそのように世の中に影響を与えた一つの要因は、私たち原作者が「ワインの専門家ではなかったから」ではないかと分析しています。
事実、私たちはソムリエ試験を受けたこともないですし、ワインエキスパートとかのバッジも持っていません。いわゆる「ノムリエ」(ワインを飲む専門家?を意味する造語)にすぎません。だからこそ『神の雫』はワインを学ぶのではなく、ワインを飲んで感じ、楽しみ、自分の中でイメージして楽しむ漫画になっているのです。
漫画がヒットして、「ワインの勉強はどこでしたのですか?」と聞かれることが増えました。そのつど、私たちはこう答えています。
「机の上の勉強はしていません。飲んでいることが勉強です」──これは、謙遜でもなんでもなく、まぎれもない本音です。
大事なことは「ワインを楽しみたい」という、純粋な好奇心なんじゃないかと思います。お勉強はいりません。むずかしそうだという心理的なハードルをとり去って、子どものような素直な気持ちでワインと向き合って楽しんでほしいです。
なぜ初心者は“フランスワイン”から飲むべきなのか
ご存じのようにワインは世界中でつくられている飲み物です。ワイン生産国として有名なのは、もちろんフランスが筆頭としてあげられます。しかしそれだけじゃない。イタリア、スペイン、ドイツといったヨーロッパ各国でも古くから個性的なワインがつくられています。
だから「フランスワインしか飲むな」と言っているわけではもちろんありません。ワインを理解したいなら「フランスワイン」からスタートしてほしいと思っているのです。
その理由は、どの国のワインもどこかしらにフランスワインの存在を感じることが多いから。どの国のワイン生産者も、結局のところ伝統的なワイン国家であるフランスのボルドーワインだったりブルゴーニュワインだったりと、代表的なフランスワインをイメージしながらつくっている気がするからです。
つくり手もフランスワインを意識しているのであれば、飲み手であるわれわれも、一見とっつきにくそうに見えるフランスワインから飲み始めるほうが、「ワインとは何か」という明快だが難解な問いの答えに早く迫れるのではないでしょうか。
そしてフランスワインにはワインの魅力も難しさもすべて備わっているので、「フランスワインを知ること=ワインを知ること」にもなるでしょう。
フランスワインは作り手の哲学がこめられた飲み物
優れたワインは「哲学」を持っています。実はこれが、ワインの魅力にいちばん影響を与えるような気がしています。つくり手が何を見ているか、何をつくりたいと思っているか、そういう哲学的な思いを持っている人のつくるものほど、飲み手に感動を与えられるのではないでしょうか。
「1本のワインボトルの中には、すべての書物にある以上の哲学が存在する」
これはフランスの生物学者、ルイ・パストゥールの格言ですが、感動するワインと出会ったとき、誰しもがそのなかに「哲学」の存在をみてとることができるでしょう。
ワインの魅力に気づくためには、ある「きっかけ」が必要
ただ、こうしたワインの魅力に気づくためにはきっかけが必要です。居酒屋で飲み放題のワインばかり飲んでいると、この魅力に気づけないまま時間が過ぎていきます。
そのきっかけとは何か。それはあなたの心を突き動かす1本と出会えるかどうかにかかっています。われわれのワイン人生も1本のワインとの感動的な出会いからスタートしました。みなさんにもぜひ、そんなすばらしい一本との出会いを経験してもらいたい。そのためにはまずワインとの出会いを、臆せずに重ねていくことが大切だと思います。
もちろん、どの国にも哲学を持ってワインづくりをしている生産者はたくさんいます。しかし、雨が降っても雨よけをかけることさえ許されない厳格なワイン法にもとづき、何世代、何世紀にも及ぶ歴史を背負いながらワインづくりをしているフランスでは、明確な哲学がなければワインづくりを続けていくことはできません。だからこそ、フランスワインには哲学を感じる一本が多いのではないか、とわれわれは考えています。
このような様々な理由から、ワインを飲むならフランスワインから始めることをぜひおすすめしたいと思っています。そしてフランスワインを通してワインの魅力に目覚めてもらってから、世界中の個性的なワインたちを楽しんでほしいです。
「ワイン初心者はフランスワインから飲め!」
大ヒットマンガ『神の雫』が送る、初心者も中級者も
もっとワイン好きになれる入門書
興味があってもワインにハマれなかった方、ワインの世界に憧れていたけど入り口が見つけられなかった方必見。世界を熱狂させる伝説のワインマンガ『神の雫』発のワイン入門書が登場!
ワインを楽しむため必要なことは、「純粋な好奇心」だけ。そしてフランスワインから入れば最短ルートでワインの素晴らしさに触れることができるはず!『ワイン知ったかBOOK』(主婦の友社)というタイトルには、そうした気持ちが込められています。ワインの入り口をわかりやすく提示したこの本をきっかけに、ぜひあなたもワインラヴァーのデビューを飾って下さい。
【著者について】
亜樹 直(あぎただし):漫画原作者。姉弟の共同ペンネーム。
「モーニング」誌上にて『サイコドクター』『サイコドクター・楷恭介』『神の雫』『怪盗ルヴァン』執筆後、
2015年『マリアージュ ~神の雫 最終章~』連載開始。2018年現在も連載中。
2008年、グルマン世界料理本大賞の最高位「Hall of Fame」を日本人として初めて受賞。
2010年、フランス農事功労賞シュヴァリエ受勲。そのほか受賞多数。
オキモト・シュウ:漫画家。
「モーニング」誌上にて亜樹直と組み、『サイコドクター・楷恭介』『神の雫』『怪盗ルヴァン』執筆後、
2015年『マリアージュ ~神の雫 最終章~』連載開始。
(C)亜樹直、オキモト・シュウ/講談社
(C)Shufunotomo.Co.,Ltd 2018
イラスト/大坪ゆり