「もっとも魅力的なギャンブルは東証というカジノ」230億円稼いだ、大注目トレーダーが見ている世界とは?

ビジネス

公開日:2019/1/7

『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(cis/KADOKAWA)

 組織に縛られず、投資による利益で莫大な資産を築く投資家は、一般庶民からしてみれば憧れの存在だ。だが、成功するためのリスク、元手となる資産、必要な勉強について考えると、どうしても尻込みしてしまう人も多いだろう。そこで、本記事では一風変わった“投資本”を紹介する。本書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(cis/KADOKAWA)の著者・cis氏は、麻雀やポーカーが大好きなギャンブラーであり、230億円近い資産を築いている超有名投資家だ。投資家というと「自分の資産で企業を支援している」人たちを思い浮かべるかもしれないが、cis氏は「もっとも魅力的なギャンブルは東証というカジノ」だと言い切り、“ゲーマー”として相場に参加していることを明言している。そんな彼の投資哲学はどのようなものなのか?

■上がり続ける株は上がり、下がり続ける株は下がる

 著者が株に対するアドバイスを求められた際に真っ先に言うのは「(株価が)上がり続けるものは上がり、下がり続けるものは下がる」という言葉だという。

 安く買って高く売ることができれば儲かる、これが株取引の基本だ。そのため、安い値で買おうとして値段が下がっている株を買い、値段が上がっている局面にある株を敬遠しがちな人たちがいる。多くの人はどこかでバランスを意識してしまうため、たとえばずっと下がっている株があればそろそろ上がるだろう、あるいはずっと上がっている株があれば、そろそろ下がるのではないか、そのように思ってしまう。

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 けれども、著者は、上がっている株には上がっている理由が、下がっている株には下がっている理由があるのだから、基本は上がっている株を買う「順張り」であり、市場の潮目に沿って行動するのがいちばん勝つ可能性が高いと語る。

 次の瞬間株価が上がるか下がるかは誰にもわからない。下がっている株価が上がる反転のタイミングは永遠に訪れないかも知れないし、あったとしてもずっと先のことなのかもしれない。確実なのは、「今上がっているかどうか」という事実だけ。投資で勝つための第一歩として、都合の良い思い込みを捨てることの重要性を述べる。

■“2匹目のドジョウ”もそれなりにいる

 著者は、つねに相場に対する“仮説”を考えているという。それは、明確なロジックがあり、まだほとんどの人が考えていないことや、ロジックは不明でも、経験則として明確な関連が認められるもの。こうした仮説がハマると、“1匹目のドジョウ”となり、莫大な利益を手に入れることができる…というが、これはいささか初心者にはむずかしい。だが、相場の「歴史」を勉強しておけば、“2匹目のドジョウ”を狙うことはできるという。2005年に起きたジェイコムの誤発注事件で著者は6億円の利益を上げたが、過去の事例を学んで様々な仮説を持っておくことで、とんでもないイレギュラーなことが起こった際にも大きな勝機を見出すことができる。

■これから相場をはじめるなら…?

 初心者は何からはじめればいいのだろうか。著者によれば、これから50万~100万円の予算で投資をはじめるのであれば、最初はIPO(新規公開株)でのデイトレードを提案している。最初はストップ高になる可能性も高いから、そこで勝ったお金を次の投資の原資にすればいいという。予算が2000万円ほどに増えたら、徐々に他のものにも手を出していく。

 cis氏のプレイスタイルは、決して運や資金力に頼った派手なものではない。さながら熟練の雀士のように、複雑な相場を冷静に読み取り、リスクとリターンを天秤にかけ、“勝つ”ための一手を打つ。決断力、人脈、情報、資金調達力――さまざまな要素が複雑に絡み合い、“総合力”で勝負する、“投資”という壮大なゲーム。本書を読んでワクワクしたのなら、あなたにも素質があるのかもしれない。

文=中川 凌