“2.5次元俳優沼”にハマる女の行く末は……!? のめり込んでいく心理描写がリアルすぎ!
公開日:2018/12/28
あなたのまわりにも、こんな人がいるかもしれない。『悪い推しほどよく炎上(も)える~私のオキニがやらかしまして…~』(池田ユキオ)の主人公は、今、話題の“2.5次元”──漫画やアニメを原作とした舞台と、そのキャストである俳優にハマった女性だ。“2.5次元”の部分を、韓流スターやロックバンド、会いに行けるアイドルグループに読み替えると、あなたの身近にも“推し”=お気に入りのパフォーマーを応援している人が、ひとりくらいはいるのでは? いや、もしかして、あなた自身が“推し”を追っかけている人だったりして?
物語の発端は、主人公・美月が、2.5次元ミュージカルの観劇に誘われたことだった。
劇場に足を運んだ美月は、熱い舞台と、大好きなキャラクターを演じた若手俳優・流星に、すっかり夢中になってしまう。さらには観劇の帰り道、スマホで見ていた流星のSNSにコメントをすると、なんと流星本人から返事がきた。舞台の上で輝いていた流星が、自分だけに言葉を返してくれる──その実感に、美月はどうしようもなくときめいてしまう。
そもそも美月は、半年前、とある事情から地元を離れ、ひとり暮らしをはじめたばかり。慣れない環境で、友人もおらず、寂しかった心の隙間を埋めるように、美月は流星とのやりとりにのめり込んでいく。
流星が「ジム用のシューズを新調したい」とSNSでつぶやけば、限定品のシューズをオークションで競り落としてプレゼント。多少お金がかかっても、流星の笑顔が見られるなら幸せだ。彼に会えるファンミーティングでは、おしゃれだってがんばってみる。流星と出会ったことで、心は潤い、観劇つながりの友達もでき、美月の生活は一変した。ところが……。
くやしい、あの女には負けられない。ライバルとの競り合いは加熱し、美月はのっぴきならない状況に追い詰められていく。
なにかに「夢中」になることは、決して悪いものではない。それが適度な熱中ならば、生活に張りが出て、日々を楽しく過ごせるだろう。しかし、我を忘れるほどの「無我夢中」となると、失うものも多いようだ。本作では、俳優沼にハマっていく美月の心情が、実にリアルに描かれている。それだけに、彼女の行く末が自分のことのように感じられ、背筋がぞっと寒くなる。
ところで、勘のいい読者ならすでに気がついているかもしれないが、本作のタイトルは『悪い推しほどよく炎上える』。炎上するのは、美月の家計だけではないようだ。ドロ沼へのジェットコースター、その予測できないどんでん返しを、あなたもぜひ体感してみてほしい。また、笠倉出版社ホームページでは特設動画も展開中なのでぜひチェックを!
文=三田ゆき
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