関西の人気漫才師・シャンプーハットこいでが贈るあったかい家族の日常『パパは漫才師』

エンタメ

公開日:2019/1/3

『パパは漫才師 1』(シャンプーハットこいで/小学館)

 関西人なら誰もが知る漫才師・シャンプーハット。ボケ担当のこいでさん(通称こいちゃん)とツッコミ担当のてつじさんが、おっとりとした絶妙なテンポで掛け合いを見せ、人気を集める。彼らの漫才の見どころは、ネタの途中でお客さんに怒りだすところだ。文章では伝わりづらいので、ぜひ一度ネタを見てほしい。「もうとっくに漫才は終わっています!」「笑わないでください!」というセリフに吹き出してしまうだろう。

 そんな人気漫才師のボケ担当こいちゃんが漫画を執筆した。『パパは漫才師 1』(シャンプーハットこいで/小学館)だ。こいちゃんは漫才師でありながら、3児のパパでもある。本作はその日常を描いたものだ。読んでいると心がほっこりし、「家族っていいなぁ」と思わせてくれる。その日常を少しだけ切り取ってご紹介したい。

■こいちゃんとかくれんぼ

 シャンプーハットは普段は吉本の舞台でお客さんを笑かし、舞台の出番がない日は関西圏の番組に出演してお茶の間をわかす。

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 しかしこいちゃんも、家に帰ってくれば3児のパパだ。いつも通り仕事を終え夕方に帰宅。奥さんに「おかえり~」と言われながらリビングに向かうと……子どもたちの姿がない。長男・なおじ(6歳)、長女・唯(4歳)、次女・ちこ(3歳)の3人はここ数日、こいちゃんが帰宅するたび、リビングから姿を消していた。

「今日もみんなおらんのか~」

 ガッカリするこいちゃん。……すると、リビングのカーテンの向こうから声が聞こえてきた。

「ウフフフ、パパ、気付いてないで」

 どうやら子どもたちは、父親を驚かすためかくれんぼをしているようだ。なんだか微笑ましい。やっぱり家族っていいなぁ。

 しかしこのエピソードには続きがある。カーテンに隠れる長男なおじと次女ちこがケンカを始めたのだ。

「おっきい声出すな! バレるやろ!」
「なおじの声の方がおっきいでしょ!」

 そして……。

「うるさい! あっちいけ!」
「あっ」

 ちこがなおじを突き飛ばし、2人ともカーテンから姿を現してしまう。ここからが問題だった。

 目が合う父親と子どもたち。

 いや隠れんのかい!!!!!

「パパ全然気付いてへん」
「声でかい!」

 そんなアホな……。さすがの父親も唖然とする。

「将来、この子たちは友達のサプライズパーティーの足を引っ張るかもしれない」と本気で心配するこいちゃんをよそに、何事もなかったかのように隠れ続ける2人。

 うーむ……家族って……いいのか? これでいいのか?

■こいちゃんとカンチョー

 本作は、ボケとツッコミと温かみがあふれる家族の日常を、こいちゃんの個性的な画力で描きだす作品だ。全部で14話あるうち、もう1つだけご紹介したい。

 今日もいつものように子どもたちと遊ぶこいちゃん。3対1でお相撲(らしきもの)をとっていたのだが、長男のなおじがやってしまった。父親からカンチョーを食らった反撃に、三角定規で父親をカンチョーしてしまったのだ。

 オーマイガットトゥギャザー……。これは痛い。

「そんなんでケツ突いたらケガするやろうが!」

 思わず怒るこいちゃん。

「パパが先にやったんでしょ」
「指と三角定規はちゃうねん! 血出るやろが!」

 思いのほか痛かったので、つい感情が乗るこいちゃん。「そんな悪さするんやったら一緒に遊ばへんぞ!」と叱る。

「いいも~ん。1人で遊ぶも~ん」

 怒られたなおじは反省せず、捨てゼリフを残して部屋に入ってしまった。けれども寂しそうな口調とその背中に、こいちゃんも「ちょっと言い過ぎたかな?」と後悔が走る。

 その後も唯とちこと一緒に遊ぶのだが……なおじが気になる。しばらくすると、部屋の入り口から3人を見つめるなおじの姿が。そのうちトコトコ近づいて……涙を流している。

 その姿にホロリときたこいちゃん。

「何してんねん、なおじ! 来い! 3人じゃないとパパ倒されへんぞ!」

 やっぱり家族って素晴らしい。怒ったり泣いたり悩んだり、子育ては大変だけど、それ以上にあったかくて笑える毎日がある。

 本作は、こいちゃんの家族の日常を切り取り、その幸せをおすそ分けしてくれる漫画だ。この作品を読むことでちょっぴり笑いが足りていない家族に、ボケとツッコミと、オーマイガットトゥギャザーな時間が訪れるだろう。

 小学館が提供するアプリ「サンデーうぇぶり」でも読むことができるので、ぜひこいちゃんの父親ぶりをのぞいてほしい。

文=いのうえゆきひろ