その生きづらさ「見捨てられ不安」かも? 寂しさが希望になるヒント
公開日:2019/1/6
頼まれてもいないのに、なにかにつけて「記事を書きますよ!」と言ってしまう。メリットがないと、人は自分と付き合ってくれないと思っているからだ。それでいて相手が話に乗ってくると、(やっぱりメリットがないとわたしはダメなんだ…)と勝手に落ち込んでしまう。当然、人と深い関係を築くことができずにいた。『生きづらいあなたには「見捨てられ不安」がある!』(妹尾まみ/主婦の友社)のタイトルを目にしたとき、ああ、わたしはたぶん、コレだなと思った。
“見捨てられ不安”は、幼少期の親(とくに母親)との関係によって生まれることが多い。わかりやすい例で言うと虐待やネグレクトだが、たまたま母親が不機嫌だったり、気分にムラがあったりするだけでも、子どもは敏感に感じ取り、見捨てられ不安を抱くようになることがあるという。わたしは両親の愛情を十分に受けて育ったが、母と父が不仲だったことで、子どもなりに傷ついていたのかもしれない。
見捨てられ不安がある人は、“自虐的思考回路”を持っているという。「自分は大事にされない存在、つまり価値のない存在」という思い込みが強すぎて、「どうせわたしなんか」「どうせわたしはダメだろう」「わたしさえ我慢すればいいんだ」といった自虐的思考に陥ってしまうというのだ。
介護福祉士の桃子さん(36歳)。桃子さんは毎朝、スタッフルームに自腹で購入したお菓子を持っていったり、他の職員が少しでも長く休憩が取れるよう、自分の休憩時間を短く切り上げたりしていた。自分より他者を優先するという、典型的な自虐的思考だ。しかし、どれだけ桃子さんが尽くしても、ミーティングの時間になると職員たちの不平不満が飛び交う。桃子さんは「自分がこんなに頑張っているのに、みんな文句ばっかり」と、だんだん恨みがましい気持ちになっていった。こうしたストレスから、パニック障害を引き起こしたり、アルコール依存症になったりするケースが少なくないという。
では、どうすれば見捨てられ不安を克服できるのか? ひとつは、他者と信頼関係を築くことである。たとえ母親との愛着を獲得しそびれたとしても、周囲の人との関わりを大事に育てていけば、きっとその中から、信頼関係で繋がれるような出会いが見つかるはずだと、著者は言う。
本記事の冒頭で、「メリットがないと、人は自分と付き合ってくれないと思っている」と書いた。長年、そう思って生きてきた。しかし今年、“わたしと付き合ってもなんのメリットもないのに、なぜかとても良くしてくれる”人たちとの出会いに恵まれ、「自分は愛されてもいい存在なんだ」と心から思えるようになった。いまも人付き合いに対して不安はあるし、生きづらさも感じているのだが、わたしの中でなにかが変わった。見捨てられ不安は、きっと克服できるものだと実感している。
得たいの知れない不安や寂しさを抱いている人は、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。もしかしたらその寂しさは、見捨てられ不安かもしれないから。そしてそれは、必ず乗り越えられるものだから。
文=水野シンパシー