全て実話の整形レポ漫画! ブサイクな人生から解放されたくて私は整形しました

マンガ

更新日:2020/2/28

『自分の顔が嫌すぎて、整形に行った話』(愛内あいる/KADOKAWA)

「自分の顔が大嫌いでたまらない…」そんな苦しさと戦い続けていると、“整形”という道を選びたくもなる。しかし、整形で顔を変えれば、私たちは本当に美しい人間になれるのだろうか。『自分の顔が嫌すぎて、整形に行った話』(愛内あいる/KADOKAWA)は、そんな疑問を抱かせてくれる1冊だ。

 著者である愛内氏は幼い頃から妹と顔を比較され、親に「あいるはブサイク」と言い続けられてきた。「自分の顔は人より劣る…」幼心にそう植え付けられた愛内氏はかわいくなるために、精一杯努力をし続けた。

 かわいい洋服、メイクの研究、話し方の勉強、笑顔でいること…。人から好かれ、好きな人に振り向いてもらうため、必要なことは全て行った。しかし、その中で痛感したのは、好きになった人は結局みんな、顔がかわいい子を好きになるという現実のむごさ。そんな経験を繰り返し、絶望していった愛内氏はついに二重手術で、コンプレックスだった目を美しくしようと決意。しかし、その先に待っていたのは、予想とは違った未来だった…。

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“どうして私はこんなにもブサイクに生まれてしまったのだろう”

 愛内氏が作中に記したこの言葉に共感する方は多いだろう。筆者もそのひとりで、自分の顔に自信が持てない。鏡に映る自分が直視できず、人と話しているときに「この人は私の顔をどう思っているのだろう…」と不安にもなってしまう。だが、本作を読み進めていると、そんな“顔面至上主義”の考えによっていったい誰が幸せになれるのだろうと、考えさせられた。

 たしかに、自分に自信が持てるようになるのであれば、整形は素晴らしいコンプレックス解消法のように思える。しかし、もし心がどす黒くなっていってしまうのなら、それは何のための整形なのだろうか。

 整形は顔を美しくはしてくれるが、心を美しくしてくれるわけではない。私たちは、「自分はあの子よりも上」という感情を抱くと、心が醜くなる。自分よりも下に見なした誰かを蔑んでしまうこともあるだろう。しかし、そうした醜い気持ちの裏には自分への劣等感や知らないうちに積み上げてしまった固定観念が深く関係していることに気づいてほしい。

「二重はモテる」「女は美しくあるべき」「好かれるためにはいつでもニコニコ笑っていなければ…」。劣等感から生み出された、こうした固定観念は全て“呪い”となり、自分や他人を傷つける。これらはいくら顔を美しくしても取り除けないため、自分自身と向き合うことで気づく必要がある。

 人は顔も性格もひとりひとり違う。それは当たり前のことなのに、私たちはいつでも “自分ではない誰か”になりたがっている。「ブスか美人か」という2択の世界で生き続けていてはもったいないほどの持ち味が、ひとりひとりにあるのに、だ。

 人生に生きづらさはつきものだが、それをどう乗り越えるかは本人の手にかかっている。整形という1歩を踏み出す前には、それが自分にとって蜜と毒のどちらになるのかを検討しつつ、自分にかけた呪いを取り払っていこう。

文=古川諭香