戦うヒロイン・プリキュア! 15周年を迎えて新しい変身アイテムはどう変わる!?
公開日:2019/1/5
少年がヒーローに憧れるように、少女はヒロインに憧れる。『リボンの騎士』のサファイアや『はいからさんが通る』の花村紅緒など、時代や世相を反映してさまざまなヒロインが登場した。ゆえに時代を代表するということになれば多くの意見があるのだろうが、今まさに終わろうとしている「平成」という時代に関していえば、間違いなく『プリキュア』という存在はその有力候補に挙げられるはずだ。
『プリキュア』とは『ふたりはプリキュア』から始まり2018年に15周年を迎えるアニメシリーズで、少女たちが「プリキュア」に変身して悪の組織と戦う物語である。『プリキュア15周年アニバーサリーブック』(Febri編集部:編/一迅社)では、総勢55人にものぼる歴代プリキュアたちを一挙に紹介。その流れをビジュアル的に楽しむことができる。
やはりシリーズを見続けてきたファンにとっては、初代『ふたりはプリキュア』が思い出深いであろうか。個人的に印象に残っているのは、ヒロインのひとり「美墨なぎさ」の口癖である「ぶっちゃけありえない」というセリフ。主題歌にも用いられる有名なフレーズ、この「ぶっちゃけ」という言葉は現在でこそ普通に使われるが、昭和の時代には一般的でなかった。しかし『プリキュア』シリーズが始まる少し前に放送されたとあるドラマで多用され、一気に流行。『ふたりはプリキュア』ではキーフレーズに使われているのに対し「流行を取り入れようと頑張っているなあ」などと感じたものである。
流行でいえば、言葉以外にも「変身アイテム」がある。『ふたりはプリキュア』で登場するカードを使った「カードコミューン」は、トレーディングカードが大流行して以降「カード」がホビー分野の主力商品化したことを反映していた。また平成を代表するアイテムに「携帯電話」は欠かせないが、もちろん『プリキュア』シリーズにも登場する。いわゆる「ガラケー」から「スマホ」など端末の進化に合わせて、複数のシリーズで携帯型のアイテムが使われていた。スポンサーに玩具メーカーが含まれる場合は玩具の売り上げが番組の継続に直結するケースが多いので、制作側としても世間の動向に無関心ではいられないのである。
その制作側に目を転じると、プロデューサーの鷲尾天氏が本書のインタビューで「(女児向け作品を)これまでやったこともなかったし、どうすればいいかもわからなかった」とした上で、第一作の企画書に「女の子だって暴れたい」という一文を書き記している。これまで同時間帯には『おジャ魔女どれみ』シリーズや『明日のナージャ』という、戦い要素薄めの作品が放送されていた。そこへきて、肉弾戦を主体としたアクションシーン満載の『プリキュア』を制作したことは確かに冒険であったろう。
しかしフタを開けてみれば視聴率、玩具売り上げ共に好調で、シリーズとして定着していくことになる。この「戦う女の子」が受け入れられたのは、やはり時代が無関係ではなさそうだ。「男女雇用機会均等法」が施行されてすぐ、世は「平成」となった。平成は女性の社会進出が一層、推進された時代でもあったのだ。社会で活躍する女性たちの姿が、プリキュアたちの勇姿と重なったとしても不思議ではあるまい。
最後に、15周年を迎えた『プリキュア』の映画最新作が「アニメ映画に登場する最も多いマジカル戦士の数」としてギネス世界記録に認定されたことは、平成最後のタイミングとしてはこの上ない朗報である。そして来るべき「新しい時代」においてどのようなプリキュアが描かれていくのか、今から楽しみでならない。
文=木谷誠