夫の出勤直後に男を家に呼び込む…女性専用風俗の内幕。快感と癒しをカネで買う女たち
公開日:2019/1/17
2018年4月に公開されて話題になった映画『娼年』(三浦大輔:監督、石田衣良:原作)。主演の松坂桃李が、出張ホストという男性のセックスワーカーを演じたことで、「女性専用風俗に興味が湧いた」という人はどうやら、男女ともにそれなりにいたようだ。
そんな事実を教えてくれるのが、『女性専用 快感と癒しを「風俗」で買う女たち』(ハラ・ショー/徳間書店)である。
本書は、女性専用風俗(以下、女性用)カテゴリーの中でも「マッサージ、性感マッサージ」を提供する合法店(風俗営業の申請を出しているお店)の、サービス最前線にフォーカスした1冊だ。全国の人気店7店舗の経営者やキャスト(施術する男性。セラピスト、施術師などとも呼ぶ)へのインタビューや、施術現場レポート、愛用者女性たちのインタビューなどで構成されている。
サービス内容の詳細や、ハマってしまう女性の動機、背景などを知りたい人、さらにキャスト志望の男性などにとっても、本書は絶好のガイドブックになるだろう。
■女性専用風俗の合法店と無認可店の注意すべき大きな違い
本書に登場する経営者のひとりは、映画『娼年』を「女性用サービスの知名度アップに貢献してくれた」と喜ぶ。一方で「むしろ営業妨害」と、不満を口にする経営者も登場する。
営業妨害だととらえる理由は大きく3つあるという。ひとつは映画により、違法行為である「本番」(性器挿入)を期待する女性が増え、キャストが施術現場で困ることが多々あること。次に、軽い気持ちでキャストに応募する男性が増えたこと。そして「無認可個人店」が今後、増える可能性があることだという。
女性用サービスでは“本番もアリ”というよからぬ噂が広まった原因は、映画の他にもあるそうだ。それが、風俗営業の申請を出さない、無認可個人店だ。
合法店では、本番厳禁を徹底している。一方で、無認可店は「マッサージや接客スキルもなく、本番がしたいだけの輩が多い」と本書は指摘する。集客窓口のホームページに、「ご予約は1日1名様限り」とあるときには「ヤリ目店」を疑うべきだという。
個人店を警戒すべき理由は、安全性の問題からだ。合法店では、お店を介さないプライベートな付き合いは禁じられており、個人情報の交換もご法度だ。そのため女性客は、自身のプライバシーを守ることができる。また、キャストは定期的な性病チェックが義務付けられている。こうした安全性の保証がないのが個人店というわけだ。
ただ本書を読むと、女性客がキャストとの本番を望む気持ちも伝わってくる。それほどにキャストたちは、「心身ともに癒されたい」「女としての自信を取り戻したい」「とにかく優しくされたい」「思い切り絶頂を感じたい」など、幅広く女性のニーズに応えるスキルを持ち、女性の心と体をわしづかみにしてしまうのである。
■年間独占契約料金600万円を支払う女性客も!?
キャストが女性の心までもつかめる理由は、サービス内容の豊富さにもある。マッサージサービスはホテルなどで施術を行うだけだが、オプションサービスが店によってさまざまにあるのだ。
例えば、施術の前後に「デートコース」で恋人気分が味わえ、お泊まりはもちろん、店によっては、数日から年間単位でのキャスト貸し切り(つまり独占契約)などもあり、予算に応じて、お気に入りのイケメンキャストをわがものにできる。
年間独占契約を提供する店によると、その費用は600万円。それでも払って「貸切る客がいる」というから驚きだ。
つまり、レンタル彼氏需要も取り込んでいるのである。そのため「恋人のように依存する女性も多い」「他の指名客に嫉妬する」など、女性特有のハマり傾向を持つ女性も増えているという。
女性用ビジネスの成否のカギを握るキャストだけに、お店はどこも「キャスト採用」に真剣で、軽い気持ちで応募しても面接はされないそうだ。
キャストの中心世代は30代、40代だが、最近は大学生や若年層の顧客ニーズに応えるために、20代も増えているという。ちなみに若年層では、処女の女性客が彼氏との行為の“予行準備”としてキャストを買うケースも多いらしい。
お店の看板だけでなく、女性の明るい未来までを担うキャストになるための最低必要条件は「まず容姿」。さらに、マッサージや接客スキルの習得が課せられ、自腹出費もある。
それでいて、女性用サービスは料金体系が低めの設定なので、キャストの仕事だけで生計は成り立ちにくいのが現実のようだ。
■インバウンド需要も取り込む女性専用風俗
デビューまでの道のりが厳しい分、ハイクオリティなキャストたちの“性のおもてなし”は、アジア系観光客女性からのインバウンド需要もしっかり取り込んでいるという。女性の性の解放が加速しているのはどうやら、日本だけではないようだ。
一方で本書には、キャストを買う費用をねん出するために風俗勤務を始めた女性や、夫の出勤直後に自宅にキャストを呼ぶという育児ママも登場する。こうした“キャストにハマった女性たち”の冷静さを欠く行動が、社会に新たな波風を立てる日は遠くない気もする。
まだまだ始まったばかりのこの解放ムーブメント。今年はいったい、どんな展開になっていくのだろうか…。
文=ソラアキラ