セミは1週間で死んでしまう…は古い俗説【知らないと恥ずかしい!? 「平成31年版」理系の新常識】連載第1回
公開日:2019/1/22
大人になると、学生時代に苦手だった理系科目にますます距離を感じるという人も多くなる。でも、理系の知識は、健康に関わる医療だけでなく、私たちに身近な食べ物や電化製品や動物のくらしなど、生活に欠かせない情報にも必ず関わるものだ。
あなたが苦手だと思って遠ざけていた間に、常識だと思っていた知識はとっくに古いものになっているかもしれない。すでにくつがえされた古い情報や、科学的根拠のないエセ科学を口にしたら、「残念な人…」と評価されてしまいかねない。この連載では『日本人の9割が信じている 残念な理系の常識』(おもしろサイエンス学会:編/青春出版社)から、知れば誰かに教えてあげたくなるような最新情報を紹介していきたい。
■セミは1週間しか生きられない…は過去の通説(本書48ページ)
「セミは地上に出てたった1週間で命を終えてしまう」と思われがちだが、はたしてそんなに短命の虫なのだろうか?
セミの幼虫が地中で過ごす時間は、非常に長い。アブラゼミは2~5年、クマゼミは4~5年とされている一方で、虫の王様と呼ばれ人気の高いカブトムシは、卵から成虫になり死ぬまでおよそ1年である。セミは思っているよりも長命の昆虫なのだ。
さらに、地上に出たセミたちは繁殖を終えると役目が終わるが、捕食者などに襲われなければ、3週間から1カ月も生きていることが研究でわかってきた。それなのに1週間の寿命という通説が広まった理由として、本書は「飼育の難しさ」を挙げる。虫かごなどの中では、餌となる樹液を吸う環境をつくることが難しいからだ。
なるほど、セミは1週間ですべて死んでしまうわけではないようだ。盛夏に頭上から降ってくるように響く大勢のセミの大合唱を思い浮かべると、なんだか合点がいく。
本書では、健康や食生活に関わる身近な話題から、電化製品、IT、生物、宇宙といった幅広いジャンルにわたって、私たちがうっかりアップデートしそびれてきた「最新の理系の常識」を教えてくれる。根っからの文系体質だという人でも気軽に読むことができるだろう。平成生まれの人も、昭和生まれの人も、本書を片手にあなたの知識の「新旧度」を計ってみてはどうだろうか?
文=田坂文