怒りのピークはたった◯秒…「イラッ」とした気持ちを抑えるには?
公開日:2019/1/24
人は年を重ねると丸くなるという。しかし、年をとって信念に近いものを持ち、より頑なになっていく人も多い。人との争いを避けたいと願う人なら、多かれ少なかれ「寛容」について考えたことがあるのではないだろうか。寛容とはどういうものか? 人に寛容であるためには、どうすれば良いのか?
『寛容力のコツ:ささいなことで怒らない、ちょっとしたことで傷つかない(知的生きかた文庫)』(下園壮太/三笠書房)には、個々人が前述の答えに辿り着くためのヒントが詰め込まれている。
まず、人はなぜ「イラッ」とするのか。
本書によると、イライラは、何らかの敵(危険)から本能的に身を守ろうとする反応。そもそも、イラッとするのは、人として当たり前のことなのだ。イラッとしやすいのは、日本人特有の事情もある。私たちは、子どもの頃から「人はいつでも真面目に努力しなければならない」という道徳的価値観を教え込まれてきた。日本人は真面目が多いといわれるが、真面目だからこそ、他人に厳しい。そして、それ以上に自分にも厳しい。本書は、怒りを持ちやすい人ほど、実は自責の念も持ちやすいという。常に何かと戦っているのか、いつも怒りを表しているあの人は、もしかしたら、心の中であなたと同様に「もっと寛容になりたい」と願っているかもしれない。
いい大人になれば、年齢にふさわしく、怒りの罪を理解し、分別をわきまえた言動をとるのが当然だ。それなのにイラッとしてしまうのは、「怒り」という感情がかなり厄介な存在だからだ。本書によれば、「頭が真っ白になる」「われを忘れる」という言葉があるように、人はカッとなると、しぜんと客観性を失ってしまう。そして、発生した怒りは「人の勝ち負けにこだわらせる」ため、相手を攻撃するための極端な行動に自分を向かわせる。
不寛容の根源である「カッとなることを食い止める」には、「自分と違う価値観を受け入れることができる」「違う価値観を楽しむことができる」という性質を得る必要があり、本書で紹介されているようないくつかの訓練が必要となる。一朝一夕では得られないようだ。
しかし、怒りに身を操作されることを防ぐ手立てならあり、今日からでも実践できる。
本書によると、怒りの感情は長くは続かない。衝動のピークは6~10秒程度だという。呼吸に意識を向かわせるなどして、この時間をやり過ごせばいい。しかし、一度怒りを抱いた出来事への警戒期間はしばらく続く。何らかの刺激によって、一度やり過ごした怒りがぶり返すことがある。やはり最終的には、本書に掲載されているヒントや訓練によって自分の価値観を多様化することが、穏やかな生活を送るために必要なようだ。
文=ルートつつみ