早い!簡単!旨い!日本酒に合う、絶品おつまみレシピ
公開日:2019/1/27
ビールにワイン、焼酎、日本酒、ウイスキーなど、人それぞれお酒の好みは異なるだろう。私自身ワインと日本酒が好きで、たまの晩酌を楽しみにしている。米が栽培される日本では全国各地に地酒が存在し、その土地ならではのおいしい日本酒を堪能することができる。旨いお酒には旨いおつまみが必要だ。我が家でも日本酒に合うおつまみをよくつくるが、レパートリーをもっと増やしたいといつも思っている。『蔵人直伝日本酒つまみ』(SSI認定 唎酒師 酒GO委員会/日東書院)は、全国でも有名な酒蔵の蔵人が普段つくっているおつまみを紹介している一冊だ。
日本酒の原料は、米と米麹のみ。中には醸造アルコールを添加しているものも多いが、本来は米と米麹だけでつくられる。現在のように流通経路が発達する以前は、その土地へ実際に足を運ばないと地酒を飲むことはできなかった。その土地の風土に根付き、その土地で生まれた郷土料理と寄り添うように飲まれてきたのだ。そのため、同じ土地でつくられたお酒と料理は合わないわけがない。本書でも、各地に点在する酒蔵の人気酒と、その土地でよく食べられている食材を使った料理の組み合わせが紹介されている。
たとえば、石川県の酒蔵「菊姫」の蔵人は、「イノシシ鍋」や「金沢おでん」「たくあんの煮物」などを紹介している。日本海沿岸地域では漬物のたくあんを煮る料理が見られるが、これが日本酒とよく合うという。石川のお酒を飲む際には、このように地元の郷土料理を家庭でつくってお酒と一緒に楽しんでみてはどうだろうか。本書に掲載されているレシピは、どれも簡単なものばかり。煮物や和え物、焼き物など、どれも家庭ですぐつくれそうなものばかりだ。料理屋でしか食べられないと思っていた鯛の昆布締めも、市販の刺身を利用して手軽につくれると知って驚いた。
本書には、日本酒の温度変化による味わいの変化や、お燗のつけ方などについても詳しく説明してある。「日向燗」や「飛び切り燗」、また「雪冷え」「花冷え」などの温度変化による呼び名も興味深い。また、日本酒の香りと味の特性から日本酒を4つのタイプに分類し、それぞれに合う料理を紹介しているのも注目したい点だろう。4タイプとは「熟酒」「醇酒」「薫酒」「爽酒」の4つで、たとえば熟酒は、ナッツやスパイスのような複雑な香りと熟成された甘みと旨みを持つと特徴づけてある。きっと、自分好みの日本酒を探す指南書にもなってくれるに違いない。
また、熟酒は力強いコクと旨みが特徴なので、濃厚な味つけの料理や発酵食品などとの相性も良いという。和食だけでなく、バターや生クリームなどを使ったこってり系の洋食と組み合わせてみるのも面白いだろう。それぞれのタイプの日本酒に合う食材が紹介されているので、ぜひ参考にして楽しんでもらいたい。
そして、日本酒の楽しみの一つに酒器選びがある。「日本酒にはお猪口」というイメージを持つ人は多いかもしれないが、漆塗りの器や切子グラス、フルートグラス、小ぶりの焼き物など、自由で懐が広いのも日本酒の魅力だろう。器の厚さによっても飲み心地や保温性が異なるため、同じ日本酒を違った角度で楽しむこともできる。日本酒にはまってきたら、お酒を注ぐための道具である片口やちろり、徳利などにも目を向けてみよう。きっと、日本酒の世界がますます広がるはずだ。
本書の後半では、4タイプそれぞれの味わいの日本酒に合うおつまみレシピが掲載されている。キャロットラペやタコとグレープフルーツのマリネ、切り干し大根のナポリタン炒め、サーモンのリエットなど、ちょっとした来客がある際のおもてなしレシピにもなるだろう。見た目も美しいおつまみだが、どれも簡単であっという間につくることができるものばかりだ。休日には夕方早い時間からキッチンに立ち、おつまみをつくりながら日本酒をチビチビ始めてみてはどうだろうか。
文=トキタリコ