エロくないページを探すほうが難しい! 『処女執事』の花丸文庫BLACK×西野花の最強オメガバ『運命淫戯』!!
公開日:2019/1/24
寒い冬、濃厚なココアやシチューが美味しい季節ですよね!? BLだって、濃いのが美味しい! ということでご紹介するのは、花丸文庫BLACK×西野花という最強タッグが世に放つ、特濃オメガバース・ファンタジー『運命淫戯~ピンクのオメガと獣人王~』(西野花/白泉社)!
ヴァルナヴァスという国の首都・コルダには、人々から寄せられる依頼をハンターに斡旋する施設、国営のギルドがある。ギルドへの依頼は、おつかいレベルのものから危険なモンスターを退治してほしいというものまでさまざまだ。ストロベリーブロンドの髪が美しい青年・ユアンは、ハンターの中でも最も優れたS級で、高額な報酬金を得て暮らしている。だが、彼には、とある事情があった。忌々しい発情期を避けられない性、オメガなのだ。
ユアンは、3ヶ月に一度訪れる激しい発情期を、馴染みの娼館でベータを買い、彼らに抱かれてやり過ごす。みずからも元男娼で、ハンターになることで娼館から抜け出してきたユアンにとっては、矛盾に満ちた苦悩の時間だ。オメガと同様、その数が少ないと言われるアルファと番(つがい)になったなら、発情も落ち着くだろう。しかし、アルファ優位の力関係がある中で、番う相手を見つけることは容易ではない。
そんなユアンの心をかき乱すのは、雄の魅力あふれる美丈夫、獣人王のバルドだ。アルファのバルドは、なぜかユアンに執心していて、執拗に「お前は俺の嫁にする」と迫ってくる。だがユアンは、バルドと番うわけにはいかなかった。ユアンの古巣の娼館では、まだ仲間たちが男娼として働いている。オメガは、発情期を抑制する薬が必要で、貧しい家にその負担は重かった。ユアンは、ハンターとして稼いだ金を娼館の主に納めることで、家族のもとから売られてきたオメガの男娼を、残らず救い出そうとしていたのだ。
より多くの報酬を得なければ、そう思うほどに高額な賞金首でもあるバルドのことが脳裏に浮かぶ。寝首をかかれる危険を冒してまで、バルドがユアンに会いに来るのはなぜだ? ユアンはユアンで、どうしてかバルドに触れられたときだけ、そこから熔けてしまうような甘い感覚に襲われる。いや、その理由はわかっている。バルドが、ユアンの運命の相手だからだ──。
レーベルは、ハードな内容で楽しませてくれることでおなじみの花丸文庫BLACK、著者は、濃密な情交に定評のある西野花氏。さらにオメガバース設定、元男娼受け、獣人攻めとくれば、もうエロくないページを探すほうが難しい。おまけに、簡潔ながらしっかりと世界観のわかるファンタジー、トレジャーハンティングのロマン、強がりで健気な主人公の性質も作用し合って、広々と爽やかな読後感が得られる仕上がりとなっている。
運命なんて信じないというユアンの生き方は、なるほど、運命というのは絶対的なものではなく、選択的なものにもできるのだなと思わせてくれる強さがある。愛されシーンを堪能しながら、心の栄養にもなる本書。ぜひ、どっぷりたっぷり味わってください。
文=三田ゆき