繁盛店こそパートさんが元気! 人を集め、辞めないようにする方法
公開日:2019/1/31
馴染みのスーパーへ行くと、女性店員さんがこちらの顔を覚えているためか、可愛らしい笑顔で挨拶してくれる。その人の顔を見るのも楽しみのひとつなのだが、いつもバタバタと忙しそうである。それもそうだろう。「パート募集」の告知が店頭に掲げられてもう1年近く。要は人手不足なのだ。
『マンガでよくわかるパートさんを集める技術』(赤沼留美子/商業界)では、とある地方の中規模食品スーパーチェーンを舞台に、如何にしてパートさんたちを盛り上げるかをコミックパートと解説パートに分けて描き出している。舞台や人物、そして物語と、どれもスーパーで働いたことがある人には共感できることが多いと思う。実は私も、以前バイトで働いていた店のことを思い出していた。
「求人を出しても応募がない」「入ってもすぐ辞めてしまう」──そんな店は少なくないと思う。私が居た店も同じで、そのせいかベテランか新人かの極端な人員構成だった。しかし、なぜ人が集まらず、たとえ入ってもすぐにやめてしまうのか? それを解き明かすため、まずはパートさんの利点を考えたい。
パートさんは地元の人間が多く、地域の事情に詳しい上に、お客さんと顔馴染みであることも。そして繁忙期には短時間でも働いてくれるなど、うまく活用できれば実に心強い。本書ではそれを踏まえた上で、更にもう一歩進めた提案を。コミックパートで店長たちはパートさんに女性を求めているのだが、40代以下の主婦、シニア層、外国人の採用を推奨している。実は総務省「平成29年労働力調査年報」によると「男性は60代、女性は30歳代から60歳代」が職業を持たないというデータがある。
本書では彼らを活用しようというのだ。シニア層ならその経験を活かせるし、最近まで現役だった人であればレジだって担当できる。子供が中学生になった主婦なら、子供に手が掛からなくなった分、勤務時間を延ばせるしもっと働きたい人もいる。外国人でも日本語が堪能であれば、外国人客への接客にとても有利だ。私の働いていた店も外国人客が多く、英語と日本語で対応できる人はとても重宝した。
募集条件を再考してパートさんが集まっても、すぐに辞めてしまうことも少なくない。今度はその問題に対処しよう。本書では辞める原因として対人関係と仕事内容への不安を挙げている。知らない相手と不慣れな仕事を務めるのは確かに不安だから、それを優先して取り除きたい。本書では対処法として「教えてくれる先輩がいつもそばにいること」「分からないときにすぐ聞けること」「分からないときに自分でも調べられること」の3つを提示。
コミックパートではこんな事例を挙げている。新人の教育係を任された中堅パートさんが辞めたいと言い出したので、店長が事情を聴くとベテランパートさんとうまくいっていないという。そのベテラン、仕事はできるも我が強く、物言いもキツイ。こんな人に心当たりがある読者も多いだろう。私も似た人を知っているのでむしろ笑ってしまうが、当事者にとっては笑えない。
店長がベテランパートさんと話をすると、少し誤解が生じていたことが判明。店ではタブレットを用いて動画で作業マニュアルを作成し新人教育に活用し始めたが、ベテランはそれを若い人たちだけで勝手にやっていると思い気を悪くしていたのだ。そこで店長は改めてベテランには仕事を回すことに専念するように頼むと、ベテランも態度を改め事態は沈静化した。
私など「そんな面倒なパートは辞めさせれば」とも思ったが、確かにそれでは本末転倒。第一そのベテランはとても仕事ができるのだ。実際、私の知っているベテランも口は悪いものの、仕事はできるし慣れれば話し易い人だった。人を使うということは確かに難しいが、互いに助け合う気持ちで働けば、うまくいくはず。結局は、人と人との繋がりこそが、気持ちの良い職場環境を生む基礎になるのだろう。
文=木谷誠