残念、筋肉痛が遅れてやってくるのは年齢のせいじゃなかった【知らない人が多い!? 「平成31年版」理系の新常識】連載第4回

スポーツ・科学

公開日:2019/1/30

『日本人の9割が信じている 残念な理系の常識』(おもしろサイエンス学会:編/青春出版社)

 大人になると、学生時代に苦手だった理系科目にますます距離を感じるという人も多くなる。でも、理系の知識は、健康に関わる医療だけでなく、私たちに身近な食べ物や電化製品や動物のくらしなど、生活に欠かせない情報にも必ず関わるものだ。

 あなたが苦手だと思って遠ざけていた間に、常識だと思っていた知識はとっくに古いものになっているかもしれない。すでにくつがえされた古い情報や、科学的根拠のないエセ科学を口にしたら、「残念な人…」と評価されてしまいかねない。この連載では『日本人の9割が信じている 残念な理系の常識』(おもしろサイエンス学会:編/青春出版社)から、知れば誰かに教えてあげたくなるような最新情報を紹介していきたい。

■筋肉痛は即感じるタイプと遅発性のタイプがあるのだが…(本書96ページ)

 週末子どもの運動会に参加したり、久しぶりに山登りを楽しんだりしたら、火曜日頃になって筋肉痛が遅れてやってきた…なんていう痛い経験はないだろうか? そんなときに「若い頃は翌日筋肉痛になったもんだが、やっぱり年のせいだなぁ」などとつぶやくのは、どうやら“残念な語り”になるらしい。

 筋肉痛が遅れてくる原因が年齢とは関係ないことが、近年医学的に実証されている。

 筋肉痛には3つの要素が関係しているとされる。1つは疲労物質の蓄積。筋肉に負荷をかけると疲労物質が溜まり痛みが起こる。2つ目は、筋繊維が傷つくこと。筋肉は大きな力で収縮を繰り返すと小さな断裂を起こし、その傷ついた部分が炎症を起こす。この2つはどちらも運動直後の痛みの原因で、「即時性筋肉痛」と分類される。

 3つ目は筋肉が修復するときに起こる炎症だ。傷ついた筋繊維は一度分解されその部分に新しい繊維がつくられるが、その分解の際に痛みが生じる。これが、遅れてやってくる「遅発性筋肉痛」の正体だ。

 さて、年をとると多くの人は運動する機会が減るものだ。肉体的なパフォーマンスが落ちるため、以前は筋肉痛が出ないレベルだった運動程度でも、筋肉の回復が必要になるため、遅発性の筋肉痛を起こすというわけだ。つまり、筋肉痛が遅れてやってくるのは、年をとった人ではなく「ふだん運動をあまりしない人」ということになる。

 運動不足…耳が痛いコトバだ。だが、筋肉痛のタイムラグを実感したら、意識的に運動機会を増やすようにしたいものだ。

 本書では、健康や食生活に関わる身近な話題から、電化製品、IT、生物、宇宙といった幅広いジャンルにわたって、私たちがうっかりアップデートしそびれてきた「最新の理系の常識」を教えてくれる。根っからの文系体質だという人でも気軽に読むことができるだろう。平成生まれの人も、昭和生まれの人も、本書を片手にあなたの知識の「新旧度」を計ってみてはどうだろうか?

文=田坂文