得する“年金ワザ”って? 「老後破産」も避けられる“一生お金に困らない仕組み”とは

暮らし

公開日:2019/2/4

『書くだけでどんどん得する!あんしん老後の「お金ドリル」』(井戸美枝 他/日経BP社)

 お金に関する悩みは、年齢を重ねるごとに増えていくように思える。20代の頃よりも働き盛りである30~40代になった頃のほうが「老後もちゃんと生活していけるだろうか…」と不安になっているはずだ。一説によれば、老後に安心して生活していくには、ひとり当たり数千万円規模の蓄えが必要になるといわれている。しかし、そんな大金はどうやって貯めたらいいのか分からなくなってしまう人も多いはずだ。

 そんな老後のお金に関する悩みをスッキリと解決してくれるのが『書くだけでどんどん得する!あんしん老後の「お金ドリル」』(井戸美枝 他/日経BP社)だ。本書は老後破産しないよう、イラストやグラフを使用し、お金の貯め方や家計の見直し方を教えてくれる。さらに、読者が直接書き込める「老後のお金の不安を解消すto doリスト」が全7つ収録されており、各々に合ったお金の管理法を知ることもできる。

 老後の生活は考えると、不安ばかりが押し寄せてくる。しかし、「老後の生活費」や「老後の収入」、「老後の蓄え」を早めに見える化できれば、お金に困らない老後を送ることができるのだ。

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■今の生活費を把握することが老後を安定させる近道に

 人生100年時代といわれている今の世の中で安心な老後を迎えるにはまず、100歳までの人生に生活費がどれくらい必要になるのかを把握していこう。

 実は老後にかかるお金は、全部で5種類の使い道に分けられる。

 生きていく上で必要となるお金は、こうして使い道ごとに分けて考えると管理がしやすくなる。

 使い道が分かると、老後にかかるお金を見える化したいと考え、家計簿をつけたくもなるだろう。しかし、中には家計簿が3日坊主になってしまう方もいるはずだ。そんな方におすすめなのが今の生活費をざっくりと把握し、老後の生活費を弾き出すこと。必要となるのは、本書と預金通帳のみ。

 現在の年収や特別な支出などをチェックリストに記していけば、老後の1カ月の生活費が具体化されるのだ。この方法なら、現在のお金の流れが目で確認できるようになるため、無駄な出費をスリム化することもできるようになる。

 今現在の「支出」と「貯蓄」を把握し、見つめ直していく。これこそが、安心な老後を送るための近道になるのだ。

■医療費の蓄えよりも介護費や医療保険の見直しを

 老後にかかるお金の中で最も心配になってしまうのが、医療費だ。しかし、実は日本の公的保証はとても充実しており、一部の人を除けば医療費の自己負担割合は70歳以上75歳未満で2割、75歳以上なら1割で済む。

 そして、もしも重い病気にかかったとしても高額療養費制度により、月々の医療費の上限が決められているため、「医療費で老後破産してしまうのでは…?」と過度に心配する必要はない。

 だが、介護となると話は別だ。自分や配偶者に介護が必要となった場合は長期戦になる可能性もふまえ、介護される側とする側の両方に経済的な負担がのしかからないよう、前もって備えておかねばならない。

 生命保険文化センターが平成27年に行った調査によれば、介護にかかる月額費用の平均は7万9000円、平均介護期間は59.1カ月と判明した。しかし、介護にかかる費用は要介護度によって変わり、期間も個人差が大きい。だからこそ、今のうちから介護費を蓄えると共に医療保険の内容を再確認し、もしもの時の出費を減らせるように努めていく必要がある。現在加入している医療保険を見直すときは、4つのチェックポイントを意識してみよう。

(1)単体の医療保険か他の保険の「特約」か
(2)保障期間は「終身」や「定期」か
(3)保険料は何歳までいくら払うのか
(4)入院給付金の限度日数や、手術給付金の金額は?

 これらの情報を本書内に収録されているチェックリストに記載すれば、現在加入している医療保険が本当に自分にとってふさわしいものなのかも分かるはず。手元の金融資産や自身の体調を考慮し、医療保険を解約したり他の医療保険への加入を検討したりするのもよいだろう。病気や介護にかかるお金は、健康な今のうちに準備しておく必要があるのだ。

■知っているだけで得する“年金ワザ”

 老後の資金として最も頼りたくなるのが、公的年金だが、公的年金は職業や生まれた年によって貰える金額や時期が異なるので、注意が必要。

 例えば、年金の支給開始は原則として65歳とされているが、生まれた年によっては65歳より前に「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる人もいる。また、中には通常の年金にプラスして「加給年金」や「振替加算」などを受け取れるケースもあるので、自分は一体何歳からいくらくらいの年金が貰えるのかを把握しておかねばならない。そのためには、自分や配偶者が貰える年金も見える化してみよう。

 50歳未満の方は、毎年の誕生月頃にはがきで届く「ねんきん定期便」に記載されている、将来の年金情報も要チェック。ただし、はがきの情報はあくまでも、これまでに支払った国民年金と厚生年金の保険料からの試算であるため、実際に受け取れる年金額は「ねんきんネット」で確認しよう。

 パソコンやスマートフォンから年金の情報が見られる「ねんきんネット」は、年金手帳に記されている基礎年金番号を知っていれば誰でも利用できるので、ぜひ登録してみてほしい。

 なお、老後の貴重な資金源となる公的年金には知っているだけで得をするヒミツもたくさんある。本書には蓄えを増やすための“得する年金ワザ”もいくつか紹介されているので、参考にしてみてはいかがだろうか。

 将来のお金に関する悩みは、現在のお金の流れを具体化することで解消させられる。老後破産に陥らないためには若くて健康な今のうちに家計を見直し、貯蓄法を考えていこう。

文=古川諭香