会社をマンネリで退屈な「人間牧場」だと感じたら…? 自分のアイデアを実行に移すには
公開日:2019/2/1
なんとなくいまの仕事にマンネリを覚え、充実感もない。そう感じながら職場に通っている人もけっこういるかもしれない。ただ、たいていの人は、その程度の不満で会社を辞めようとは思わないだろう。リスクが高すぎるからだ。
しかし、そういった退屈に飼いならされた状態を「人間牧場」という強烈なことばで表現し、そのままでは変化の激しい現代社会では生き残れないと説くのが、『セス・ゴーディンの 出し抜く力』(セス・ゴーディン:著、神田昌典:監訳/三笠書房)である。著者はパーミッション・マーケティング(客から承諾を得て行うマーケティング活動)の提唱者とされるアメリカのマーケティング業界の第一人者で、『バイラルマーケティング』(翔泳社)や『「紫の牛」を売れ!』(ダイヤモンド社)など日本でも翻訳され、ヒットしたビジネス本は多い。
■一番重要なのは、「思いついたことを実行すること」
もっとも、著者自身も断っているように、本書には、具体的なビジネスやマーケティングのノウハウが記されているわけではない。また、2006年から2012年まで書かれたブログをまとめたものなので、筋道だった流れがあるわけでもない。その分、どの箇所から読み出しても参考になることは多いだろう。そして、一貫して繰り返し書かれていることがある。それは、「変化をおそれないこと」。そして、「とにかく行動に移すこと」のすすめだ。
著者は、ビジネスにおいて一番難しいのは、誰もが思いつかなかったアイデアを思いつくことよりも、「思いついたことを実行することである」と断言する。斬新なアイデアを生み出す発想法などが称揚されがちなビジネス本のなかで、これは独自の視点といえるだろう。たしかに、どんなにいいアイデアを思いついたとしても、それを実行に移さなければ、なにひとつ存在しないのと同じだ。
■実行に移すときに気をつけたいワナとは?
では、なぜ人は変化をおそれたり、行動することをためらったりしてしまうのか? そのひとつの大きな要因として、「自分らしさというワナ」があると本書は指摘する。多くの人は自分自身で作り上げた「自己イメージ」に執着しており、それが変わってしまうかもしれない新たな行動に、ためらいを感じてしまうのだという。
しかし、そこまで確固とした「本当の自分」などが存在するのかは誰にもわからない。ただの思い込みかもしれない。ならば、おそれることなく新しいことを始めてみようというのが著者の主張だ。
ちなみに、マーケット戦略家は人々の抱く「自己イメージへの執着」を上手に刺激し、それぞれの人がもっているストーリーにあった車や旅行、サービスを提案する、と本書には記されている。これは、専門家ならではの指摘だろう。そして、「自分らしさ」の正体とは、その程度のものなのかもしれない。
もちろん、多くの人にとって「自分を変える」というのは困難が伴うものだ。しかし、いま自分がいる環境に多少なりとも不満があるならば、会社の上司や同僚といった他人を変えるよりも、自分を変えるほうがたやすく、そして確実なことも事実である。
文=高坂笑/バーネット