イケてない人事部には「一貫性」がない! リクルート、ライフネット生命の人事セオリー

ビジネス

公開日:2019/2/7

『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(曽和利光/ソシム)

 リクルートが、東京大学教育学部心理学科の出身者たちが作った会社だということをご存知だろうか? リクルートのマネジメントスタイルは、創業者の徹底した人間洞察、合理主義、現実主義に基づいているという。人事と採用にとても力を入れている成長企業のことをマスコミは「先進的」「リクルートっぽい」と呼ぶそうだが、人事コンサルタントの曽和利光氏は「そういう企業のほうが、組織や制度がロジカルで原理と原則に則っている」という。

 曽和利光氏はかつてリクルートで人事部ゼネラルマネージャーとして人材採用の責任者を務め、その後ライフネット生命やオープンハウスの人事責任者を歴任。現在は株式会社人材研究所の代表取締役社長として、人事コンサルティングを行っている。『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)は、曽和氏がそれらの経験をもとに記した人事担当者必読の書だ。

 人事にはさまざまな役割があるが、それらの機能を担うのに重要なのが人事の「一貫性」だという。たとえば、ある人材が入社後に成果を出せないとき、採用担当者は「育成担当が面倒をみていない」と考え、育成担当者は「採用担当が良い人材を採っていない」と考える。そうならないためには、人事全体の共通認識として「一貫性」を設ける必要がある。

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 そのやり方は、企業のタイプによって2種類に分かれる。「安定・成熟事業型」と「変革・新規事業型」だ。「安定・成熟事業型」は、勝ちパターンが決まっていて会社の方針を大きく変える必要がない企業のこと。「変革・新規事業型」はゼロベースでモノを考えて、抜本的な方針転換も考慮することが必要な企業だ。「安定・成熟事業型」が「改善型」なら、「変革・新規事業型」は「改革型」である。

「安定・成熟事業型」に必要な一貫性は、メンバーが同じ方向を向いて力を合わせる仕事のやり方。ポテンシャルのある人材を採用して育成し、トップダウンで組織を動かす。「変革・新規事業型」には個人プレイが求められるため、即戦力のある人材をオンデマンドに採用し、ボトムアップで組織を動かす必要がある。このように、企業のタイプ、価値観や企業風土に応じて人事の一貫性の「軸」となる部分を決めていく必要があるのだという。

 もちろん、そのときの事業環境で戦略や組織のあり方が変わるため、「軸」をすぐに見極めるのは難しい。重要なのは、それぞれの企業によって「容易に変わらないもの」を見つけることだ。たとえばその企業の「社会的な使命やビジョン」「カリスマ経営者の価値観」などが挙げられる。そのように容易に変わらないものを「軸」として人事のあり方を決めることだ。

 これまで、性格のバラバラな企業の人事を責任者として歩いてきた著者。その知識を余すことなく披露している本書は、全国の人事責任者・人事担当者にとって非常に役立つものだろう。また、人事に評価を受ける人材側も、企業が求める人物像を今一度考え、自分をそれに近づけていくヒントとなるのではないだろうか。本書が提案する仕組みやセオリーを、企業の活力として、そして明るい未来への橋渡しとして、ぜひとも生かしてほしいものだ。

文=ジョセート