人づき合い、お金の考え方が変わる! 処世術が身につく覚えておきたい「ことわざ」

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公開日:2019/2/10

『日本のことわざを心に刻む』(岩男忠幸/東邦出版)

 先人たちの知恵や考え方がぎっしりつまった「ことわざ」。日常を生きる中で得た経験や見た景色を、テンポよくイメージしやすい言葉でしたため、ことわざを聞いた人を戒めて諭す役割を果たしてきた。ことわざは人との付き合い方や言葉の使い方、お金に対する考え方など、様々な場面で生きるヒントや指針を授ける。ことわざは先人たちが私たちに残した遺産。処世術が身につく言い伝えだ。

『日本のことわざを心に刻む』(岩男忠幸/東邦出版)では、ことわざを50音順に並べ、意味や由来を解説する。本書に収録されることわざの数は500を超えており、まるで辞書のような1冊だ。先人の知恵の数々を読み進めると、人生経験や達観を得た感覚になる。なんだか頭の良い人になった気分だ。

 そこで本書より先人たちの貴重な教えをいくつかご紹介したい。

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●女房に惚れて家内安全

 これは家族に事故や病気が起きない家内安全と、家内=妻をかけたことわざだ。夫が妻に惚れていれば家内=妻は安全、つまり妻は余計な心配をせず心安らかにしてくれるので、夫は妻に危険を感じずに安心していられる。夫婦喧嘩をすることもないので、家族に被害が及ぶことなく平穏で家の中は安全。一見ダジャレに感じるが、深い意味を持っている。世の男性は自身の妻を深く愛して家内安全を心がけたい。

●金は三欠くにたまる

 誰もがお金持ちになりたいと願う。しかしお金は義理を欠き、人情を欠き、人付き合いを欠くぐらいに“がめつく”生きなければ貯まらない。大事なものを犠牲にして、人並みではない特別な生き方をする覚悟がないとお金は手元にやってこない。これはそんな意味を表すことわざだ。世間を騒がすあの著名人たちは、どんな「三欠く」の末にお金を手にしたのだろうか。

●口は禍の門(くちはわざわいのかど)

 うっかりした発言が思わぬ災難を招くことがあるから、不用意に物を言ってはいけない。「口は禍の元」とも表現する有名なことわざだ。この手の言い伝えは数多く存在し、本書では「口は禍の門」の項目に合わせて類似のことわざを20以上解説している。

「口の虎は身を破る」
「舌の剣は命を絶つ」
「口から生まれて口で果てる」
「刀の傷は治せるが言葉の傷は治せない」
「言葉は剣よりもよく切れる」

 SNSで炎上する人々が後を絶たない昨今、これらのことわざが少しでも多くの人に届けばと切に願う。

●二度教えて一度叱れ

 子どもは間違えながら成長するものだから、いきなり叱るのではなく繰り返し教えることが大切で、叱るのは“たまに”でよいという教えだ。昨今の教育本に勝るとも劣らぬ気づきを、ことわざは教えてくれる。

●親の心 子知らず

 子のためを思う親の愛情や苦労がまったくわからずに、子どもは勝手なことをするもの。そんな親の嘆きを表現するようなこのことわざ。しかし親の存在は子どもの心に確実に残っている。

●親の意見と冷や酒は後できく

 はじめは酔わないが、後からじわじわ酔いがまわる冷や酒のように、そのときは理解できなかった親の意見が、時間が経ってしみじみわかってくる。

●他人の飯を食わねば親の恩は知れぬ

 やがて親元を離れて両親のありがたさを知る。

●子を持って知る親の恩

 そして自分が親になって、受けてきた親の愛情やかけた苦労を知る。

●親思う心にまさる親心

 子が思う以上に親は子を思っていることを、いずれ子どもは理解し、親に感謝する。親と子どもに関することわざを目にするだけで、子どもが親から愛され、反抗期に入り、やがて自立し自身も親になり、そして老いた親に今までの感謝を抱く一生の情景が目に浮かぶ。

 さて最後にとても蛇足だが、この記事を書く私が考えた「オリジナルことわざ」を披露して終わりにしたい。真面目に考えたので心して読んでほしい。

●朝剃れば新芽が息吹く夕の青ひげ

 これは濃いひげに悩む男性の気持ちを、特に夕方になるとお肌がショリショリする嘆きを表したものだ。「厄介で無駄なものほどよく目立ち、頻繁に人の手を煩わす」という皮肉も込めている。私はこのオリジナルことわざを引っ提げて、2019年の流行語大賞を狙っている。

文=いのうえゆきひろ