劇場版『シティーハンター』で描かれなかったエピソードも追加。ファン待望の小説版が発売!
更新日:2019/3/9
累計発行部数5000万部を超える人気漫画『シティーハンター』。北条司が週刊少年ジャンプ(集英社)で1985~1991年に連載した作品で、裏社会で“シティーハンター”の異名を持つスゴ腕のスイーパー・冴羽獠の活躍を描いている。1987年からは3度にわたってアニメ化され、TM NETWORKによるエンディングテーマ『Get Wild』も話題に。だが1999年のテレビスペシャル『緊急生中継!? 凶悪犯冴羽獠の最期』を最後に、映像からはしばらく遠ざかっていた。
そのアニメ『シティーハンター』がおよそ20年ぶりに帰ってくる。劇場公開日の2月8日には、同作を小説化した『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉:公式ノベライズ』(原作:北条司、脚本:加藤陽一、著:福井健太/徳間書店)も同時発売。待望の新作エピソードを映画と小説の両面から楽しむことができる。
物語の舞台は連載当時と比べ、あらゆるものが大きく変容した2019年の新宿。JR新宿駅や歌舞伎町、花園神社、ゴールデン街など、実在のスポットが舞台となってストーリーに絡んでくる。何者かに狙われている女子大生の進藤亜衣は、スマートフォンのアプリを使ってシティーハンターと接触し、獠を胡散臭く思いながらも依頼を任せることにする。獠たちは調査を進めるうち、黒幕が亜衣を狙う真の理由を知る。そこにはひと月前に亡くなった彼女の父親が大きく関係していた。すべての全容が明らかになった時、新宿一帯を巻き込んだ“戦争”の火蓋が切って落とされるのだった。
脚本は『妖怪ウォッチ』や『アイカツ!』などで知られる加藤陽一。美女が獠たちに依頼をして、ドタバタコメディを経て少しずつ信頼を築き、最後は華麗なアクションで解決する――。『シティーハンター』ではおなじみの展開だが、今回の作品はあえてお約束をなぞることで、20年ぶりの溝を埋めている。当時を知る人は「そうそう!」と懐かしく、初めて観る人は「『シティーハンター』とはどういう作品か」を理解することができるはずだ。また、現代を舞台にしているところも重要な部分で、獠たちが立ち向かう相手は最新テクノロジーを駆使したロボット兵器たち。かつてない難敵を前に、ハイテクとは縁遠いアナログな獠がどのように戦うのかが終盤の見せ場を生み出している。
■ノベライズ版で注目したい、事件のキーマン御国真司
そしてノベライズ版はこうした劇場版の見どころを補完しながら、さらなる加筆で深掘りを試みている点が面白い。特に注目したいのが、事件のキーマンとなる御国真司だろう。
御国は急成長を続けるIT系総合企業・ドミナテックのCEO。実は香の幼馴染で、子供の頃にいじめられていたところを助けられて以来、彼女に特別な感情を抱いているキャラクターだ。いわば獠の恋敵となるライバルだが、ノベライズでは御国の過去にまつわるエピソードが詳細に書かれ、彼がどうして力を求めるようになったのか、その背景がよく分かる。奇しくも亜衣と同様に父親が大きく関係している点も興味深く、劇場版とはまた違う余韻を与えてくれるはずだ。
さらにノベライズには、劇場版に登場するさまざまな設定資料も特別に収録。獠が使っている愛銃のコルト・パイソンや、赤い車体とかわいらしいフォルムでおなじみのミニクーパー、さらにはドローン技術を取り入れた映画オリジナル兵器などをフルカラーで掲載している。
劇場版だけでは伝えきれない新作エピソードの全貌を知るうえで、ノベライズは最高の資料だ。『シティーハンター』熱が高まる今、これを機会にぜひ手に取ってみてほしい。
文=小松良介