キラキラした生活や目標達成に距離を感じる? 「ありのままの自分」を生かす自己肯定感のガイド
更新日:2019/2/12
「私は自分自身に満足している」と答えた日本の高校生は7.5%(平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査・内閣府)。米国46.2%、韓国29.7%など世界の国々の中で突出して低いパーセンテージだ。こうした実態を受けて、子どもの「自己肯定感」を高めようという風潮が、文科省、有識者、学校、子どもがいる世帯、さらに子どもがいない人にも広がっている。
「自己肯定感」とは、「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在だ」と思える心の状態だ。自己肯定感は、人生の幸福度にも大きく影響するそうで、これがないと、依存症や鬱病のリスクが上がり、犯罪に関わる率も上がるとか。
たいへんだ、うちの子の自己肯定感を高めなくては。だがその前に、子どもたちの親は、いや親でなくても大人たちは自己肯定感を持っているのだろうか。
自己肯定感は、「幼少期の生活・教育環境によって大きく左右されると考えられており、教育上の重要な要素だと考えられている」という。だが、うちの親は毒親だったから、自己肯定感なんて身についていないという大人でも、悲観しないで大丈夫。幼少期を過ぎた子どもや大人でも、自己肯定感について学べる本があるのだ。『きみは、きみのままでいい 子どもの自己肯定感を育てるガイド』(ポピー・オニール:著、渡辺滋人:訳/創元社)だ。7歳から11歳までに向けて書かれた、自分の大切さを確認するワークブックで、大人と一緒に会話をしながら書き込むスタイルとなっている。この本を、小学生に当たる年齢だけのものにしておくのはもったいなさそうだ。幼児向けとは違ってしっかりとした内容があるので、中学生や高校生、大人でも納得して学べるからだ。
■自分に自信が持てない…その原因は?
本書は、自分の良いところを書き、さまざまな感情を言葉にするワークから始まる。次に、「この地球上に住む人間はみなちがっています」「ちがいには目に見えるものと見えないものがあります」「だれにも自分であるための特別のスタイルがある」というページに入っていく。
みなと同じじゃない自分を責める必要はなく、違うのは当然だという考えは、日本では無視されてしまうことも多い。だが、この考え方こそが自己肯定の土台だ。
そして、自信はどこから生まれるか?という章へ。「自信は心の内から生まれるものです。自己評価がしっかりしていれば、思いがけないことになっても、自分への信頼は揺らぎません」とある。
ワークの例では、クラスの前に出て文章を読むことになったボップ(本書シリーズの主人公)が、うまくできるか不安になっている場面が描かれており、彼がどうすれば自信を持ってみんなの前で発表できるかを読者に考えさせる。
結論として導かれるのは、“自信とは誰かが与えてくれるものではなく、自分で自分の考え方を改めることで生まれるもの”ということだ。
■大人になってからでも「自己肯定感」を得ることは可能
自分は、親や先生などの大人に自己肯定感を潰されてしまった…と過去にとらわれるのではなく、自分の考え方次第で自己肯定感は持てるんだよと言われると、安心感と希望が湧いてくる。
もちろん、自分ひとりだけでどうにかしろというのではなく、共感してくれる誰かの手をたくさん借りればいい。まあ要するに、自己肯定感というものは、今の自分のまま、考え方ひとつで持ち得るものだということだ。何かを達成したり、自分を変えたりする必要はなく、自分はそのままでも価値があり、堂々と自分に自信を持ってよいのだ。
これを知ると、教育現場やメディアで聞かれる「自分を成長させる」「なりたい私になる」といった言葉にはキラキラしている反面、今の自分じゃ駄目だというニュアンスを感じる。これでは、自己を必要以上に追い詰めてしまうこともあるだろう。自己肯定感の基本は、本書のタイトルのとおり「きみは、きみのままでいい」なのだ。
自分で自分の価値を信じられなければ、たとえ夢を叶えたとしても、永遠に物足りない私のままなのではないだろうか。
さて、次の休日には子どもと一緒におしゃべりしながら、またはひとりでゆったりと“自分は自分のありのままで価値がある”ことを味わってみては。
文=奥みんす