東京23区に不動産購入するなら2022年以降がトク!? 「買い」の地域はどこ? 五輪後に「くすまない街」を分析

ビジネス

公開日:2019/2/13

『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(牧野知弘/中央公論新社)

 東京23区に自分の城を構える──かつてはハードルの高かったそんな夢が、これからは叶えやすくなるという。さて、本当なのか、その噂について語る『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(牧野知弘/中央公論新社)に、その根拠を求めてみよう。

 本書は、長年、東京・首都圏の不動産に関わってきた不動産事業プロデューサーである著者が、2020年以降、主に東京23区内の土地・不動産や街、さらには不動産購入者ニーズに、どのような新潮流が訪れるのかを予測し、これからの住まい探しを「街選び」という視点から考察する1冊だ。

■2022年、東京・首都圏の広大な農地が市場に出回る!?

 なぜ今後東京23区で不動産が買いやすくなるのか、本書の解説からその理由をお伝えしていこう。

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 その大きな要因が、2022年に満期を迎える「生産緑地制度」だという。「生産緑地」とは農地を指し、首都圏(1都3県)の生産緑地の面積は、1万3653ヘクタール(2014年3月末現在)という広大な面積なのだそうだ。

 これまで、この広大な生産緑地は、1992年から始まった「生産緑地制度」により、固定資産税や相続税が30年間も優遇されてきた。しかし、2022年に満期を迎えるため、農業を営んでいた親世代からの代替わりに伴い、大量の生産緑地が手放される公算が高いという。

 生産緑地だけではない。東京・首都圏の多くの不動産が今後20年内に「相続ラッシュ」になり、同様に市場に放出される可能性が高いそうだ。

 こうした不動産の世代交代を契機に、今後東京では不動産が余り始め、価格が下落すると考えられるそうだ。したがって、もし東京に不動産を購入しようと考えているなら「2022年以降が買い時」というのが本書からのアドバイスとなる。

■「通勤しない時代の住まい選び」を考えることが重要

 では今後、「買い手優位」の東京23区で、あなたならどんな物件を買おうと考えるだろうか?

 多くの人は「複数路線が交差するターミナル駅」「会社に近い、通勤に便利な場所」をイメージするのではないだろうか。

 著者は、リクルートが毎年調査している「住みたい街ランキング」を分析し、近年、共稼ぎ家庭が増えたことから、通勤の便などを考えたJRのターミナル駅に人気が集中していると記している。

 しかし著者によれば、これから先の住まい選びは、こうした交通の利便性や会社へのアクセスを第一に考えた「会社ファースト」の発想ではなく、住む街の魅力を第一に考えた「街ファースト」の発想へと変化していくという。

 その理由は働き方改革により、在宅勤務などが当たり前の時代になるからだ。つまり「通勤しない時代の住まい選び」を考えることが重要なのだ。

 もはや、自宅=寝に帰るだけの場所ではない。「暮らす・仕事もする・人生を楽しむ」ことをトータルに考えて住む街を選ぶことが、失敗しない城づくりの要諦というわけだ。

 街選びの基準として本書は、ブランド住宅街、湾岸タワーマンション街、外国人街、オフィス街、観光地、高台(山の手)、川沿い・運河沿い、ターミナル駅街、学生街、公園・役所の近く、などのキーワードで具体的な都内のエリアを紹介しつつ、そのメリット・デメリットをあげているので、自分の好みの街を探してみてはいかがだろうか。

■東京では今後、「輝きを放つ街」と「くすむ街」に2分化する!?

 そして、街選びの際に忘れてはならないのが、本書のタイトルにもある、これから東京で拡大していくという「街間格差」だ。

 前述のように、土地・不動産が余る東京では今後、「輝きを放つ街」と「くすむ街」に2分化していくという。

「輝きを放つ街」とは、その街が放つ魅力に引き寄せられて、ヒト(一般居住者、企業、大学など)・モノ(商店など)・コト(イベントなど)がどんどん集まって活気づく街のことだ。一方で「くすむ街」はその逆で、シャッター商店街が目立つような閑散としたエリアである。

 本書には、23区別で今後「輝きを放つ街」と「くすむ街」が、エリア名をあげて解説されている。例えば「中野区」では、駅前から広がる中野、新井薬師が「輝きを放つ街」だ。中野駅前は、大手企業と大学の誘致に成功し、人が大幅に増えただけでなく、駅から新井薬師エリアまでずっと商店街が続く活気あふれる街になった。

 その一方で、ひとつとなりの東中野周辺は、総武線に大江戸線が加わったものの、活気は今後の奮闘次第だという。中野と東中野の対比はまさに、今後東京に広がる「街間格差」の典型例だそうだ。

 本書のこの街評価に関して「あくまでも私の勝手な判断です」と、著者は記しているが、これから住まいを構える際の参考には充分なるだろう。近い将来、東京23区もしくは首都圏に不動産を購入しようとお考えの方は、本書を一読しておきたい。

文=町田光