性欲はないけど愛情はある…セックスレスで離婚された男の悲哀
更新日:2021/1/26
7年連れ添った妻と、来週離婚するという男性に会った。仲良くやっていたつもりだったのに、妻はよそに恋人を作っていた。彼はそれでもいいと思っていたが……。
■ある日突然、離婚を言い渡されて
31歳のとき、2歳年下の彼女とできちゃった結婚をしたシロウさん(38歳)。彼はWEB系のデザイナーを自宅でしており、妻は会社員。そのため生まれた娘は彼がほとんどめんどうを見てきた。
「妻とも仲がよかったんですよ。ケンカしたこともない。だけど妻はずっと不満をためていたようです。たとえば僕の収入が低いこと、セックスレスだったこと、妻がときどき料理をすると娘が『パパのほうがおいしい』と言ってしまうこと。僕が妻の悪口を娘に吹き込んでいるのではないかと疑ってもいたようです。それはないと言いましたが」
セックスレスになったのは、シロウさんが「性欲をなくしてしまったから」だという。
「娘と一緒にいるのが楽しすぎたんですよね。もうひとり子どもがほしいと思ったけど、妻はキャリア上、無理って。それならセックスしなくてもいいやと思ってしまった。妻は私にだって性欲はあると言っていましたが、僕自身がどうしてもできなくて」
ここ2年ほど、妻の帰りが遅くなっていった。朝帰りをしたこともある。さすがに娘の手前、妙な行動はとらないでほしいと頼んだら、朝帰りはなくなった。
「恋人がいるんだろうなと思いました。それならそれでしかたがない。いつか帰ってきてくれればそれでいいとも思っていた」
夫に従う古い時代の妻のように、シロウさんはそう思った。
■結婚記念日に離婚届をつきつけられた
そして昨年クリスマスイブの結婚記念日に、妻から離婚届をつきつけられた。
「好きな人がいて、彼は離婚が成立した。だから私も離婚したいと。娘のことは考えているのかと言ったら、すぐには結婚しない。娘と彼を会わせて徐々に慣らしていくというから、娘は渡さないと言ったんですよ。そうしたら、『あなたの収入じゃ、娘を育てていけないでしょ』って。そこを突かれると厳しいんですよね」
娘をひきとり、妻から養育費をもらう選択もある。だが、彼は自分を主張するのはやめた。すると妻から意外な提案があった。
「娘が学校から帰ってきたら僕のところにいる。夜は妻が迎えに来る。そのためにも近くに住もう、と。ただそれは今とほとんど変わらないわけですよ。離婚届だけ出して一緒に暮らしていてもいいようなもの。だけど妻は、恋人の手前、別に住みたいと。だから僕だけ、近くのアパートを借りました。昼間、家を使ってもいいというので、逆に家を仕事場として出勤してくる感じですね。娘の夕飯は用意して一緒に食べるつもりです」
とはいえ、離婚はやはり彼にとって寂しいことだ。もちろん、妻への未練もある。ただ、レスになっている原因が自分にあり、今のところ改善が望めないので、どうすることもできないという。
「妻のことは大好きなのに、そこにセックスが伴わない。妻への性欲はないけど愛情は以前よりある。それが苦しいんです。このことは妻はまったく理解してくれないけど」
せつないですね。そう言うと、彼の目が潤んだ。
文=citrus ノンフィクションライター 亀山早苗