鍋のアク取りは本当に必要!? 【科学の豆知識で料理はもっと美味しくなる!】連載第1回
更新日:2019/2/13
料理が得意で毎日難なくこなしているという人もいれば、面倒に思いながらいやいや台所に立っている人、あるいは、もはや苦痛の元である料理は一切したくないという人もいるだろう。
ちょっと気分を変えて、どんなレベルの人にも役に立つ、そして確実に料理の腕が上がるような「豆知識・雑学」を紹介したい。『料理の科学 加工・加熱・調味・保存のメカニズム』(齋藤勝裕/SBクリエイティブ)は、「美味しいと感じる味覚のメカニズム」から、「アク取りや下味の上手な方法」まで、知っておけばすぐ活かせるような料理に関する知識が満載の1冊だ。いつもの料理をもっと美味しく、そしてラクして効率的なものにする知識を、本書から得ていこう。
■アクは有害なものではないが…(本書52ページ)
肌寒い季節に一層恋しい鍋料理や煮物。だが、「アク取り」の面倒臭さや、それを仕切る鍋奉行の鬱陶しさに辟易した、という人もいるのではないだろうか? そもそも、食材から出てきた「アク」を取り除く必要性はあるのだろうか?
アクは、食材の水溶性成分が溶け出した後に熱変成して固まったものだ(動物性の食材ならば血液やリンパ液などが固形化したもの)。十分な下処理が施され汚れや有害成分のない食材ならば、アクには有害性はない、というのが実情だ。栄養の観点からみると、取り除くのはもったいないとすることもあるらしい。
しかし、食事の「美味しさ」とはそう簡単に評価できるものではない。アクには雑味が含まれるため、除いてはじめてスッキリして上品な味が完成する。また、「見た目」も美味しく食事をするための重要な一要素だ。濁ったゴミのようなアクがぷかぷか浮かんだ鍋に食欲がそそられるという人は少ないはずだ。アク取りをしてこそ、味も見た目もクリアな料理が完成する。
やはり、美味しい料理を食べようと思うならば、「アク取りは必要」というのが答えだ。疑っていたときの自分よりも、ひとつ賢く、そしてワンランク上の料理の腕を得たような気がする――。
このように本書では、料理をしたり食事をしたりする日常がもっと楽しくなるような知恵が、多数詰め込まれている。「理系科目は苦手…」という人も、身近な題材であればすんなり頭に入ってくるだろう。ぜひ本書を手に取って、今日の食卓を「アタマ」でも味わってみてほしい。
文=田坂文