アラフォー歓喜! NEVER ENDなSF作品「クラッシャージョウ」とは?
公開日:2019/2/18
日本のスペースオペラの祖『クラッシャージョウ』がコミック化! 作画は小説版のイラストを担当した安彦良和氏…と見間違う新人作家、針井佑氏だ。ミネルバなどのメカもデザインに忠実。小説版や劇場アニメが好きだったファンたちも納得の完成度なのだ。
こう書いても、「絵は似てても中身は?」と心配な方もいるかもしれない。だが本作『クラッシャージョウ REBIRTH』(針井佑:漫画、高千穂遙:原作、安彦良和:キャラクター原案/講談社)はオリジナルの小説版をコミカライズしたもの。前述の通り安彦風タッチのジョウたち、ミネルバやファイター1などの登場メカが、所狭しと暴れまくる。自分のような小説もアニメ版も通ってきたファンにはたまらない。
■ラノベがなかった時代に誕生した「スペースオペラ」とは
クラッシャージョウは最初に小説が発売された1977年以降、21世紀に入っても続巻が刊行され続けている。なお冒頭にも書いた「スペースオペラ」という単語をご存じない方もおられるかもしれない。ざっくり言うと日本では「宇宙を旅する冒険活劇SF」とされている。特別にディープなSF知識などは持ち合わせていなくとも、幅広く楽しめるジャンルの小説だ。
当時SF小説といえば早川書房が刊行する「ハヤカワ」シリーズの翻訳ものだった。ただ『クラッシャージョウ』はそれらよりもライトなSFノベルで、理解しやすかった覚えがある。本稿の筆者である私が、最初に読んだのはまだ小学生だった。既にSF漫画やロボットアニメも観ていたため、すんなりと楽しむことができた。
銀河を駆ける万能宇宙船ミネルバや戦闘機のファイター1。色鮮やかでスタイリッシュ、さらに防弾機能や武器を備えたクラッシュジャケット。これらを使った戦闘シーンを活字でワクワクしながら読んでいた。
元々はマルチメディア企画作品などではなかった(そのような発想の小説や漫画作品も多くなかった)が、そもそもデザイン・小説の挿絵は『機動戦士ガンダム』の安彦氏によるもので、後に彼がメイン制作をつとめた劇場用アニメーションになった。
自分がアニメ、漫画、小説と「オタク道」にハマっていくピースの一つになった作品で、80年代からのご同輩もいるのではないかと思う。
■宇宙が熱い!クラッシャージョウの世界
本作は小説のシリーズ2作目にあたる「撃滅!宇宙海賊の罠」を忠実にコミカライズしたものだ。ただ2作目から忠実に描くあまり、作品の世界観やキャラクター説明が不足していると個人的に感じた。この記事を読んで初めてクラッシャージョウを読む方がいるかもしれないので、少し説明させてほしい。
舞台はワープ航法により恒星間航行が可能になった時代。人類は植民を目的として宇宙に進出していた。多くの惑星を改造し政府を置いて統治し、これらの惑星国家による「銀河連合」が形成されていた。
この惑星改造を主に行ったのが「クラッシャー」だった。彼らは惑星改造以外にもVIPの護衛、危険物の輸送や処理なども引き受ける「宇宙の何でも屋」であった。
ジョウは元祖クラッシャーのダンを父に持つ。彼のチームは腕利きの運転技術を持つタロス、孤児からクラッシャーになったリッキー、そしてとある惑星国家の王女であったアルフィンの4人だ。(小説1作目はこのアルフィンが仲間になるエピソードである)
この「撃滅!宇宙海賊の罠」では、ジョウたちは老化防止の妙薬がとれるベラサンテラ獣を輸送することになる。当然の如く高価なベラサンテラ獣は、宇宙海賊の絶好の標的になることが予想された。さらに惑星国家内の権力闘争も加わり、銀河連合軍とも一戦交える危険なミッションとなった。果たしてジョウたちは無事に輸送を完遂できるのか。現在単行本1巻(前編)が既に発売されており、3月に完結編となる2巻(後編)が発売される。そして春からは続編の「銀河系最後の秘宝」が連載される予定とのことだ。まだまだ宇宙を熱くするジョウたちの活躍から目が離せない。「燃えつきる時まで旅に終わりはない」のだから。
文=古林恭