『シティーハンター外伝』海坊主旋風到来! 悩める客たちの「XYZ」を受け止めろ!
更新日:2019/3/9
伊集院隼人――タレントでもなければ、お笑い芸人でも歌手の名前でもない。本の表紙にはサングラスをかけたスキンヘッドの大男が睨みつけるように描かれ、帯には「主役は海坊主」とある…そう! 裏社会で海坊主やファルコンと呼ばれていた男こそが、伊集院隼人。『CITY HUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常(1)』(えすとえむ:漫画、北条 司:キャラ原案/竹書房)は、この海坊主が主役。本書は、国民的な人気漫画とも言える『シティーハンター』の公式スピンオフ作品だ。
海坊主こと伊集院隼人は、この『シティーハンター』に登場する人気キャラのひとり。『シティーハンター』の主人公である冴羽獠は、凄腕の始末屋(スイーパー)であり、無類の女好き。海坊主も獠と互角の腕を持つ始末屋であり、以前は敵対関係にあった。だが傭兵を引退してからは、仕事を一緒にする親友のような仲となっていた。その海坊主に注目したのが、今回の作品だ。
ちなみに、海坊主の現在の職業は、新宿にある高層ビルに囲まれた喫茶店「キャッツアイ」のマスター。以前は人が寄り付かないような寂れた喫茶店だったが、今は“SNS映えする名物マスター”として、看板メニューとともに客からスマホで撮影されるほどの人気者となっている。
本書のストーリーは、すべて1話完結。今という時代を映し出すアイテムやキーワードが、巧みにちりばめられているのが特徴だろう。例えば「バブリータイム」の回では、バブル時代の真髄をメイクや衣装とともに全力で現役高校生に教えるワンレン・ボディコン姿の女性が出てきたり、バブリーダンスの音楽が聴こえてくるようなパーティーシーンもある。また「見守りボディーガード」の回では、ひとりでごはんを食べる子供たちを少しでも減らすために、喫茶店「キャッツアイ」が子供食堂となる場面もある。サングラス姿の海坊主が、「とにかくここへ来れば誰かと一緒に飯が食える。そういう場所を作れればと思ったんだ」とつぶやく姿は、さながらすれ違う親子の絆を結ぶ正義の味方のようだ。悩める依頼人の「XYZ」と真摯に向き合う、獠の姿とも重なってくる。もちろんストーリーには、海坊主のパートナーである美樹さんも登場する。
表紙のイラストは、北条司さんの書き下ろし。表紙と本編、2人が描く迫力ある海坊主の表情を比べることができるのも、本書の魅力のひとつだ。往年の『シティーハンター』ファンは、獠や香の気配がチラリとわかる1コマを探すもよし。『シティーハンター』を知らない世代の人たちは『シティーハンター』と共に歩んだ平成の変遷や、海坊主の視点から見えてくる社会派ドラマとして楽しむもよし。兎にも角にも悩み事ができた時は、新宿駅で「XYZ」と書く前に、まずは海坊主に相談だ!
文=富田チヤコ
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