文章力で生涯年収格差が億単位!? SNS時代を生き抜く「無敵の文章術」とは
公開日:2019/2/19
個人の時代である。普通の学生や会社員であっても、ブログやSNS、動画投稿サイトなどで自分を発信し、お金を稼ぐことができる。こうした時代において、どんな分野であろうと重要になるのが“文章力”だ。それ自体を売りにする人たちはもちろん、やりたいことの企画書や、ユーザーを集める告知にも、読み手を引き付ける文章が必要になる。本書『心を動かす 無敵の文章術』(千田琢哉/マガジンハウス)は、「大袈裟でなく、文章力次第で生涯の年収が億単位で違ってくるだろう」とまで言う。
著者の千田琢哉氏は、大手コンサル会社出身の文筆家だ。似たような経歴を持つ人は少なくないが、千田氏の場合は、その“生産量”がケタ違いである。なんと、これまでに出した著作は157冊。本書が158冊目の出版となる。筆者もそのうちの何冊かを拝読したが、どれもキャッチーでわかりやすく、それでいて確かな論理に裏付けられた納得のいく内容ばかりだった。本書は、そんな千田氏が語る“文章術”の本である。大いに頼っていいだろう。
■書くのを難しくしている犯人は、あなた。
改まって誰かに見せる文章を書こうとすると、どうにも“いいことを言いたい”とか“賢く見られたい”といった欲が出てくる。そして、あれこれ考えているうちに、下手な文章を書いてしまうのではないかと怖くなり、なかなか筆が進まない…なんてことがよくある。だが、結局のところ“今の自分以上”のものを書くことはできない。著者は、本書の冒頭でこう語る。
今、自分が知らないことは書けない。
今、自分の力量を超えた文章は書けない。
要するに、まずは、自分の現状を正しく認識し、気負わずに書くべしということだ。自分の文章に深みを出すための教養は、即席で身に着くものではない。それは、読書などで日ごろからインプットしておくものだ。
■八方美人の文章は、誰が読んでもつまらない。
これは、企画書やネット記事、SNSの投稿などさまざまな場面で言えることだろう。自分の文章を“たくさんの人に読んでもらいたい”“誰かから反感を買いたくない”という気持ちが行き過ぎると、誰にも響かないありきたりな文章になってしまうことがある。著者は、本書で「八方美人の文章は退屈」「否、もっとハッキリ言ってしまうと、八方美人の文章はこの世に存在してはいけないとさえ思う」と主張している(これこそが、八方美人“ではない”文章の手本だ)。確かに、なんとなくツイッターを眺めているだけでも、無難なことしか呟かない“守り”のツイートよりも、批判されても言いたいことをズバズバと言う“攻め”のツイートのほうがおもしろく感じるし、心に残る…。それは、企画書でもネット記事でも同じだろう。
本書を読めば、すぐに見違えるほど文章がうまくなる…わけではない。文章を上達させるためには、こうした文章術の本で語られるテクニックや心構えを頭に入れた上で、“実際に書いて、他人に評価される”ことが必要だ。自分の文章を世の中に発表すれば、必ず反応がかえってくる。SNSなら「いいね」、ネット記事ならPV数、企画書なら通過したか否か…。そうした“評価”を踏まえてさらに改善していく…それこそが、文章力向上のための常道である。
文=中川 凌