入社前に見極めたい! 「ブラック」じゃないのに社員が定着しない会社の見分け方は?
公開日:2019/2/21
企業調査会社である東京商工リサーチの調査によると、2018年の「人手不足」関連の倒産が過去最大数になったという。人手不足は多くの経営者にとって共通の悩みだ。その最大の原因が労働人口の減少であることは間違いないが、同じように人が集まりにくい業種であっても、社員の定着率が高い会社もあれば、離職率の高い会社もある。
そんな、人が集まる会社とそうでない会社の違いを、社会保険労務士として1000社以上の会社とつきあってきた著者の経験から解き明かしたのが、『人が集まる会社 人が逃げ出す会社』(下田直人/講談社)だ。
■社員がすぐ去ってしまう会社の特徴とは?
人が集まりづらい会社には、共通点がある。それは、「人をすぐに“使えるか使えないか”で判断する」、「やたらとペナルティを科そうとする」、「本来の目的を見失い、手段が目的となっている」の3点だ。
なかでもとくに問題なのが、最後の「手段が目的となっている」会社である。たとえば、残業も少なく、休日出勤もなく、有給取得率も高いという一見ホワイトな会社なのに、なぜか人が定着しない会社は多いという。
残業を減らすのも有給を取るのも、本来は社員ひとりひとりが健康に、幸福に働くためのものであり、ひいては会社の生産性を向上させるためのものだろう。しかし、ただ無理やりに勤務時間を削減したり、有給を取らせようとすることで、商品やサービスのクオリティが下がったり、休暇前後の仕事がいつも以上に忙しくなるなど、会社にとっても社員にとっても疲弊する結果しか生まないことが多いというのだ。これなど、まさに「手段と目的の混同」である。
本書によれば、昨今はやりの「働き方改革」にまじめに取り組んでいる会社ほど、社員の離職率が高いというから皮肉なものだ。
■社員の定着率が高い会社の共通点とは?
いっぽう、人が集まりやすい会社にも共通点がある。そのひとつが、「フェイス・トゥ・フェイスを重要視している」ということだ。いまはネットの発達で直接顔を合わせなくても仕事をすることはできるようになった。だが、少し前にもてはやされたノマドや、近年さかんに喧伝されているテレワークの流れとは真逆に、社員同士が顔と顔をあわせてよくコミュニケーションを取っているような会社ほど、社員の定着率は高いという。
いわば、昔ながらの家族的な雰囲気の会社のほうが、結局、居心地がよく、長く働きたいと感じるということだ。…もっとも「家族的な社風」と聞くと面倒くさいと感じる人も少なくないかもしれない。しかし著者によれば、現在人が集まっている会社は家族的な空気を大事にしつつも、「多様性」や「個人」にも最大限気を配っているという。つまり、日本的経営の進化版に取り組んでいる会社は、人手不足に悩んでいないということだ。
昨今ではブラックな会社ならばネットで調べればすぐにわかるが、「働き方改革」にまじめに取り組んでいるせいで居心地の悪い会社や、たんに昔ながらの「家族的な社風」で面倒くさいだけの会社などというのは、なかなかネットだけではわからないものだ。やはり転職前には、その会社で働いている人の話を直接聞くなど、フェイス・トゥ・フェイスの事前調査が欠かせないだろう。
文=奈落一騎/バーネット