革命的サッカー漫画爆誕! 勝ち残れば世界一! FW300人が蹴落としあい潰しあう!
公開日:2019/2/25
サッカー漫画は数あれど、こんな「攻めた」作品はなかなかない。『ブルーロック』(金城宗幸:原作、ノ村優介:漫画・漫画原作/講談社)はFW(フォワード)しか出てこないサッカー漫画だ。監獄に集められた300人のFWたちが、最後のひとりになるまで“蹴落としあい”を行うストーリーである。
「えっ、何言っているのかわからない」という方がいるかもしれないが、全くの文字通り。ブルーロック(青い監獄)に集められた高校生FWたちが、鬼ごっこをし、試合をし(FWしかいないのに!)、負けたらブルーロックから去る(日本代表には一生選ばれない)、というルールで“蹴落としあい”をする。そして残った最後のひとりが世界一のストライカーになる、というストーリーだ。本作は本当にこんなハイテンションで進んでいく。本稿もテンション高めでお送りしたい。ぜひついてきてほしい。
世界一のFWを目指せ! 青い監獄での本気のサバイバルがスタート
原作は『神さまの言うとおり』『僕たちがやりました』の金城宗幸氏。漫画を『ドリィキルキル』のノ村優介が担当。サバイバルシチュエーションジャンルを手掛けてきたふたりがタッグを組み、生き残りをかけて戦うサッカー選手たちのストーリーが描かれる。
W杯で優勝するために、日本で“あるプロジェクト”が立ち上がったところから物語は始まる。サッカーは得点を奪い、勝利するスポーツ。だが決定力不足は日本の積年の課題だ。そこで絶対的なエースストライカーを生み出すために、ストライカー育成寮“青い監獄”(ブルーロック)が設立され、300人の高校生が集められた。
謎のコーチ、絵心(えご)は彼らにこう演説する。
「日本サッカーが世界一になるために必要なのはただひとつ、
革命的なストライカーの誕生です。」「最後に残る1人の人間は世界一のストライカーになれる。」
「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない」
集められた高校生たちは絵心による“エゴイズム・セレクション”でふるいにかけられていくのだ。
ドン引きするほどのエゴイスト・ストライカーに進化!
作品のポイントとなるのは、「エゴイズム」である。現実のサッカーでもストライカーは優しい性格ではつとまらない。彼らは時には味方をも無視し、「自分が点を取ってチームを勝たせる快感」を優先させる人種なのだ。
荒唐無稽とも言えるFWだけを集めた(正確には別ポジションの選手もいるが)セレクションで頭角を現すのが主人公の潔世一である。ブルーロックに集まった選手たちは11人ずつのチームに分かれ、総当たりのリーグ戦を行う。潔は全員FWで行うゲームで苦戦しつつも、二つの能力を開花させていく。
それがもともと秘めていた「得点感覚」。そして「エゴイズム」だ。
潔は自分のゴールで勝利し喜ぶ。ふと相手のチーム11人の夢を潰したことに気づいた後、自分の中の不思議な感情に戸惑う。
これが勝つってことか…なんだよこれ
気持ちいいー!!
負ける恐怖にビビり、点を獲ることにシビれ、生き残ったことに震える。本作はこれが「勝利」であると定義し、その快感について、絵心は潔に語り掛ける。
その快感を味わうためにお前の中のエゴは育ち
そして、世界一のストライカーという高みに上っていく――
勝利の快感にゾクゾクし、戸惑いながら、潔はエゴイスト=ストライカーへの道を突き進んでいくのだ。
「攻め」なければ求める結果は手に入らない
本稿の筆者を含めて、サッカー漫画を読む人間ならばおそらく現実のサッカーもみているだろう。私たちは「サッカーで点を獲るにはメッシやロナウドがひとりだけいてもだめ」だということを知っている。そして彼ら世界トップクラスのストライカーのいる国が、W杯で優勝できていないことも知っている。
近年のW杯はストライカーさえいれば優勝できるとは限らないのだ。しかしW杯で上位になるチームにはストライカーがいる。これもまた事実なのだ。
エゴイスティックなストライカーが誕生することは、日本が強くなる最短距離なのかもしれない――。
勝利という結果を出すためには、攻撃し点を取る必要がある。
何かを成し遂げるためには荒唐無稽な「攻め」の姿勢で結果を求めていくべきなのだ。
世界一になるため蹴落としあう、「俺様」ストライカーたちの熱いサバイバルに注目だ。
文=古林恭