マンション購入前に確認したい! 将来廃墟化しない安心物件の見極め方
公開日:2019/2/25
今年10月に予定されている消費税10%へのアップを目前に、マンションの購入を考えている方もいるのではないだろうか。超低金利政策による住宅ローンの低金利傾向など、現在マンションを購入するための環境は比較的良いようにも思える。実際に東京都心部ではタワーマンションが次々と建築され、その雰囲気を煽っている。
その一方で2020年の東京オリンピックを境に、マンション価格は暴落するという説も根強く、真剣にマンション購入を考えている方にとっては悩ましいというのが現状だろう。そんな方々に手に取ってもらいたいのが『すべてのマンションは廃墟になる』(榊淳司/イースト・プレス)だ。
著者の榊淳司氏は、一般ユーザーを対象にした住宅購入セミナーを開催するほか、住宅購入に関する著書を数多く手がけてきた住宅ジャーナリスト。長い経験で培った知識をもとに、マンション購入で失敗しないためのポイントをレクチャーしてくれる。ここでは、その一部を紹介していきたい。
■せっかく買ったマンションが廃墟化してしまう?
著者の榊氏は「すべてのマンションには廃墟化への時限爆弾が仕掛けられている」と説く。それならマンションを買う意味はないではないか…と考えてしまいがちだが、榊氏は築数十年を経たマンションが「めでたく建て直しになるのか、それとも廃墟化するのか。その運命の分かれ道は“区分所有者”の意志と行動、そして財力にかかっている」と指摘する。
区分所有者というのは、マンション各戸の持ち主のこと。つまり、マンションを購入した、あるいはこれからするかもしれないあなた自身の意志や財力しだいで、マンションが住みやすい形で建て直されるのか、廃墟化してしまうのかが決まるということだ。
榊氏によれば、マンションが廃墟化する理由は、現在のマンションにおける所有形態、つまり区分所有制度にあるという。この制度を規定する区分所有法は1962年に制定されたものなので、5000〜10000戸という大規模マンションの登場や、マンションが老築化するという状況そのものも想定外だという。この法律を改めることがマンションの廃墟化を防ぐ最大のポイントになりそうだが、実際に法律を変えることは個人には難しい。
■マンション廃墟化を食い止めるカギは?
では、マンション廃墟化を防ぐために個人ができることは何だろうか? もっとも大きなポイントとして榊氏が挙げるのが、「マンション管理組合の法人化」だ。
マンション廃墟化は、2つのステップを踏んで進行するという。最初のステップは「資産価値喪失」、そして2番目のステップは「管理不能」だ。資産価値が下がると、区分所有者(持ち主)たちがマンションを所有していることへの関心が薄れる。それが管理費滞納にもつながっていく。管理費を徴収できないと、管理組合は必要な管理業務や保全が行えなくなってしまう。それが「管理不能」な状態だ。榊氏によれば、管理不能に陥ったマンションは、ほぼ確実に廃墟化するという。
それを防ぐために重要になるのが、マンション管理組合の法人化というわけだ。法人化することで、管理組合は「区分所有者になれる」。それが最大のメリットであり、新潟県・湯沢のリゾートマンションを例に、法人化された管理組合が管理費等の支払いがない住戸を競売にかけて自己競落するケースを紹介している。ほかにも、
・管理会社とコンサルタントを上手に使いこなす
・5年以上管理費滞納は(管理)組合が所有権を自動取得
・監事の監査能力の強化
・区分所有権の分割放棄
などなど、マンションの廃墟化を防ぐために効果的な手段を榊氏は本書で展開している。
「すべてのマンションは廃墟になる」といわれると、マンション購入をためらってしまいやすい。だが、本書が指摘するポイントを満たしていくことで、マンションの廃墟化を防ぎ、マンションに天寿を全うさせることはできる。
「マンションを買うことで幸せになれる」「マンションを買うことは資産を築くこと」など、マンションに対して抱いた夢や憧れだけで購入を決めてしまうのと、所有資産が持つリスクを知ってから購入を決めるのとでは、購入後の生活も大きく違うだろう。マンション購入後、長い時間住むことになるマンション。そこで過ごす時間を豊かなものにするために、購入前に本書を手に取ってみてはいかがだろうか。
文=井上淳