税金で損しない+泥沼化しない「相続」はいつするのが良い? 賢い相続をマンガで紹介

暮らし

公開日:2019/3/7

『マンガでわかる!もめない相続・かしこい贈与』(山本宏/わかさ出版)

 日本が「超高齢社会」待ったなしなのはよく報道されるところだが、なぜだか「相続」の話となると皆、あまり関心を示さなくなるようである。いや、気にはなっているが、表に出さないだけなのかもしれない。とかく日本人は「生々しい」話題に触れたがらない傾向があるからだ。しかし「高齢化」すれば、必ず人は老いて亡くなる。私も昨年、母親を亡くしたことでそれを痛感させられた。幸い父親はまだ健在なので、今だからこそ『マンガでわかる!もめない相続・かしこい贈与』(山本宏/わかさ出版)でしっかり知識を身につけ、避けがちな話に向き合っておくべきであろう。

 読者諸氏には「ウチに相続できる財産などない」と考えている向きがあるかもしれない。確かに相続税には「基礎控除」というものがあり、かつては「5000万円+(1000万円×法定相続人の数)」が基礎控除額であった。つまり最低でも6000万円くらいまでは相続税がかからなかったのだ。しかし2015年の法改正によって現在は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」にまで引き下げられている。つまり「財産などない」と思っている人たちも課税される可能性が高いのだ。私はこの事実を知らず恥じいるばかりだが、同様の人も意外と多いのではないか。今や相続税は「かかるもの」と考えておくべきであろう。

 とはいえ相続に関することは多岐に亘るため、ここは条件を絞って考えたい。私の場合、母親が亡くなったことで父親たちと話し合う機会を得た。それまで遠方にいたこともあり、実家の所有財産などほとんど知らなかった。そう、まずは家に「どれだけの相続財産があるか」を確認しておかなければならないのだ。では「財産」とはどんなものを指すのか。まずはいわゆる「土地」だろうか。自宅の建っている「自用地」や、アパートなどを持っているなら「貸家建付地」などである。もちろん土地に建っている「建物」も財産だ。そして現金や預貯金、株式などに加え、自動車や骨董品などの価値を有する物品も財産に含まれる。そういうものの評価額を算出して、相続税は決まるのである。

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 では相続財産が確定したとして、誰がどう相続するのか。基本的に一番優遇されるのは被相続人の「配偶者」である。配偶者は「常に」相続人となり、遺産配分も「50%」と最大。他の相続人は残りの「50%」を人数分で配分するのだ。配偶者以外の相続人は第一順位に被相続人の「子」、子がいなければ第二順位の「親」、それも該当しなければ第三順位「兄弟姉妹」となる。私の場合は2人兄弟で兄の所在もわかっているので問題ないが、もし兄弟といった相続に関わる血縁者が所在不明の場合など、相続に影響しそうな状況を抱えている人は早めの対策が望ましい。

 しかし基礎控除が一気に引き下げられ、正直、腹立たしく思う向きもあるだろう。ならば少しでも相続税を「減らす」方法はないだろうか。実は、ある。本書ではいくつか「税額控除」のケースが掲載されているのだが、一番わかりやすそうなのが「生前贈与」である。これは被相続人が存命のうちに、財産を相続人に「贈与」することだ。「暦年贈与」では1年間に110万円までは非課税となるので、うまく利用すれば効率よく財産を残せる。ただし相続開始3年前の贈与は課税対象となるので、なるべく早いうちに贈与を行なうのが理想だ。

 日本人の感覚として、親の存命中に「遺産相続」の話をするのは抵抗のある人も多いだろう。しかし前述の通り、基礎控除の引き下げによってかなりの人が相続税の課税対象者となる。生前贈与が節税対策として有効ならば、やはり話し合っておくほうがよい。もっとも私自身、親兄弟とどう相談したものかと、目下思案中なのではあるが……。

文=木谷誠