仕事も恋愛もうまくいく! 幸せになりたいあなたにおくる「ネコ×アドラー心理学」の世界

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公開日:2019/3/4

『ニャンと簡単に身につく! 心が休まる「アドラー心理学」』(宿南章:著、Riepoyonn:写真/文響社)

 突然だが、あなたは日々の暮らしの中でこんな想いを抱えてはいないだろうか。

□人間関係でストレスを感じやすい
□イヤな事でもノーと言えず、我慢してしまう
□自分が正しいと感じる生き方に、勇気を持って一歩を踏み出せない
□もっと満足できる、幸せを感じられる生き方を選びたい

 この中にひとつでも当てはまるものがあった場合は「ネコ」という動物を通し、心理学的視点から“自分”という人間を見つめ直してみてほしい。

“ネコに学ぶほど、ヒトは幸せに生きられる”

 そんなユニークな持論を打ち立てている『ニャンと簡単に身につく! 心が休まる「アドラー心理学」』(宿南章:著、Riepoyonn:写真/文響社)は、他とは一線を画した自己啓発ならぬ“ネコ啓発本”。

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 心理学をテーマにした書籍は専門用語が使われていることが多く、難しく感じられてしまうもの。しかし、本書はネコの習性や生き様を通して自分自身の内面と向き合うことにスポットを当てている。

 著者である宿南さんは、これまで20匹以上ものネコを飼ったことがある獣医師。普段は腎臓の病気を持つネコやイヌたちに食事療法や栄養療法を行っているが、過去にはアドラー心理学を活用しながらトップアスリートたちへの栄養指導も行っていた。その中で、宿南さんはアドラー心理学で言われている「ヒトがよりよく生きるための考え方」と「ネコの生き方」には数えきれないほどの共通点があることに気づき、本書を完成させた。

 本書にはネコ的人生のススメだけではなく、ネコに関する知識も多数収録されているのが特徴。作中にはSNSで人気を博している双子のスター猫・アメリちゃんとカヌレくん(通称:アメカヌちゃん)や同居猫のそらくんの写真も盛り込まれているため、猫好きさんも大満足できる。

 それでは、実際に“ネコ的人生”とはどんな生き方なのかをご紹介していこう。

■ネコの社交術で心をラクにしよう

 私たちが抱える悩みの多くは、周囲の人たちとの関係によって生じている。ヒトは集団を作ることで種の保存をしてきたが、集団が大きくなり、複雑化すると、ひとつひとつの悩みが深刻化するようになってきた。そんな状態から抜け出すには、ヒトとは真逆な生存戦略を取りながら生き残ってきたネコ科動物の生き方に着目してみる必要がある。

 例えば、ヒトの世界では社交的な性格であることが重宝されやすい。大人になるにつれ、人脈の大切さをひしひしと感じさせられる機会も多い。だが、ふと気付いたときに社交的な自分でいることに疲れを感じてしまう方はネコの交流の仕方を参考に、周囲の人との関わり方を見つめ直してみよう。

 ネコは記憶力がいい動物だ。たった一度会った相手のことも1週間程度は覚えている。しかし、自分の気分が乗らないときは顔見知りの相手に対してもそっけない態度を取ることがある。その姿はまるで、誰かの期待にてん沿うのではなく、自分の幸せや満足感を重視しているようだ。

 対して、ヒトは相手を主体にして物事を考え、自分を抑え込んでしまいやすい。こうした生き方をしていると心が悲鳴をあげてしまう。だからこそ、普段から自分の気持ちを抑えながら生きている方はネコになったつもりで「本当はどうしたいのか」を考え、自分の心と向き合う時間を作ってみよう。

 すべてのヒトとうまくやろうと思わず、「自分も相手も傷つかなければOK」「友達は100人いなくても十分」と考える“ネコの社交術”を見習えば、新しい世界も見えてくるはずだ。

■寄り道の中に人生の幸せがある

 人生に挫折や失敗はつきもの。それなのに私たちは無意識のうちに最短距離でのゴールを思い描き、それが叶わないと自分を責めてしまう。勤勉な人ほど、挫折や失敗を経験すると「自分はなんてダメな人間なんだ…」と思ってしまうだろう。

 だが、とある実験結果を知ると、長い人生の中で効率性を重視することは本当に大切なのだろうかと思わされてしまう。それを教えてくれるのが、動物の賢さにまつわる実験結果だ。

 この実験は迷路を用意し、どれくらいの時間で動物たちがエサに辿りつけるのかを調べるというもの。実験はネコやイヌやサル、マウスに行われ、ほとんどの動物はみな最短でエサを得ようと一直線だったそう。しかし、ネコだけは一直線にエサへ向かわず、途中で迂回したり、その場でゴロンと寝転がってみたりし、実験者が目を離した隙にエサを得ることがほとんどだったそう。宿南さんはこうした行動をネコならではの処世術として捉えている。

“こうした性質のネコですから、「最短距離で早く手に入れる」という実験では、残念ながら上位に入ることはできません。でも、実験そのものを楽しんでいるのはどっちか、という視点で見ると、とたんにネコは上位に躍り出るのではないでしょうか。”

 ネコは自分の気持ちに正直になり、あっちこっち寄り道することで、その瞬間を最大限に楽しんでいる。そう思うと、効率性を重視し、生き急いでいる自分の人生を見つめ直したくもなる。人生は寄り道をするほどおもしろく、豊かなものになっていくのかもしれないと思わせてくれる力がネコにはあるのだ。こうしたネコの処世術を知ると、隠していた自分の本音が聞こえてきそうな気がする。

「ネコ×心理学」という斬新な視点で生き方を見つめ直せる本書では、ネコという動物を深く理解するきっかけも得られる。頑張りすぎて疲れ果てている方はぜひこの最強の“自分メンテナンス本”で、心を立て直してみてほしい。

文=古川諭香