欅坂46の振付を手がける世界的ダンサーTAKAHIROが語った、マドンナへの思い、秋元康の力
公開日:2019/3/17
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、自らの人生を綴った新刊『ゼロは最強』を上梓したばかりのTAKAHIROさん。世界的ダンサー・振付家として活躍する彼に、マドンナへの思い、欅坂46や秋元康さんのことについてうかがった。
ダンスに魅せられ、大学卒業後単身ニューヨークに渡ったTAKAHIROさん。言葉も分らず仕事もなく、誰も知り合いのいない街で、ゼロから世界的ダンサーとしてのキャリアを築き上げた。マイケル・ジャクソンを輩出したヒップホップ世界一の大会「Apollo Amateur Night」で年間ダンス部門1位を獲得。そのテレビ大会『NY APOLLO Amateur Night TV Show』に出場し、史上最高記録9大会連続優勝を達成。その3年後には、マドンナのワールドツアーにステージダンサーとして参加する。
「最初は僕も、マドンナさんって実在するのかなと(笑)。彼女のツアーに加わることは、それくらい夢のような出来事でした。実際マドンナさんが目の前に現れ、存在することを知り、でもやっぱり誰もやっていないことを成し遂げている。半神半人という感じでしょうか。マドンナさんはすべてに最終決断を下す決裁者でもあるので、非常に右脳的というかロジカルな部分を持つアーティストです。そして何より、人には真似できない厳しい努力を自身に課しています。たとえば、ワールドツアーが終わって数日後にはもうトレーニングを再開している。しかも毎日欠かさず何時間も。僕なんか、追い詰められないとマックスの力は発揮できないけど、彼女はつねにマックスのエネルギーで努力しているんです」
だからどの場所にいても、新しい挑戦と人の予想を超えた新しい創造を続けることが、マドンナと共にあった者の使命だとTAKAHIROさんは考えている。デビュー曲の『サイレントマジョリティー』以来、多くの曲を手がけている欅坂46の振り付けも、極めて刺激的だ。
「メンバーの皆さんは、誰よりも歌詞を咀嚼して、その世界に全身でぶつかっている。いつも真剣に歌詞の思いを聴く人に届けている。だから、辛い気持ちや悲しみを抱えている人も、彼女たちに励まされて一歩を踏み出してみようと思えるんじゃないでしょうか」
当然そこには、秋元康さんの力がある。
「秋元先生は本当にすごいですね。まるでグループが一人の人間であるかのように歌詞を書いておられます。普段僕たちが言いたい、でも言えないことが歌詞の世界に映し出されている。僕たちが失ったもの、あるいは求めているものがそこにある。一ファンとして、僕はそんなふうに感じています」
(取材・文:松井美緒 写真:篠山紀信)
『ゼロは最強』
TAKAHIRO 光文社 1400円(税別)
ダンスに魅せられたTAKAHIROは、単身ニューヨークに渡った。言葉もできず仕事もない日々。しかし「Apollo Amateur Night」で年間ダンス部門1位を獲得、マドンナのワールドツアーに参加と、瞬く間に世界的ダンサーとしてのキャリアを築き上げていく。彼を支えたのは「ゼロは最強」という言葉だった。天才振付師が語る人生とビジネスの本質。