大人気シリーズ『薬屋のひとりごと』コミカライズ版! 中華風後宮で薬師の少女が事件を解決する爽快ミステリー

マンガ

更新日:2019/3/9

薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~
『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』(日向夏:原作、倉田三ノ路:作画、しのとうこ:キャラクター原案/小学館)

 ある日突然誘拐され、家に帰ることもできず、自分の意思に関係なくまったく新しい場所で働くことになったら。私は、その状況をすんなり受け入れられるだろうか…。そんなことを考えずにはいられない、『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』(日向夏:原作、倉田三ノ路:作画、しのとうこ:キャラクター原案/小学館)という漫画が人気を集めている。

 本書の原作は、無料小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載されている小説。主人公は、誘拐され、二千人の官女と専任の宦官を擁する後宮に売り飛ばされた薬屋の娘・猫猫(マオマオ)。猫猫は薬が作れないことに不満を抱きながらも、年季が明けるまでの2年間大人しく働くことを決意し、日々仕事をこなしていた。

 猫猫はある日、気になる噂話を耳にする。皇帝の子供たちが次々と病気になり、不審死しているというものだった。噂では“呪い”で片づけられていたが、猫猫はそんなものは信じない。毒か? 病か? と気になり、詳しい状況を聞き出して原因解明に乗り出し、原因を見事に突き止めた。

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 そんな猫猫の能力に気づいたのは、イケメン宦官・壬氏(ジンシ)。壬氏は猫猫を探し出し、彼女を上級妃・玉葉妃(ギョクヨウヒ)の侍女に任命する。そして“呪い”の原因となっていた毒を解明したことからその能力を買われ、毒見役にされてしまった。ここで毒による死を恐れるのが普通だが、猫猫は大喜び。彼女は、自分の腕や体で薬や毒の実験を繰り返している、変態ともいえるほどの薬好きなのだ。

 猫猫はその後も、薬の知識を活かし、後宮内で活躍していく。そして壬氏は、自分の美貌に一切興味を示さず薬にばかり目を輝かせる彼女に興味を持ち、何かとちょっかいを出しては鬱陶しがられて楽しんでいる。身分が違いながらもそれを感じさせないこの2人のやり取りも、本書の大きな魅力の1つだ。

 自分の置かれた状況をただ嘆くのではなく、潔く受け入れ、そこで何ができるのかを自ら考えて生きる。花街という、煌びやかでありながらも闇と欲望が渦巻く世界で生きてきたからこそなのかもしれないが、猫猫の何事にも動じないその堂々とした様子には憧れすら抱いてしまう。

 普段ちょっと何かがうまくいかないと慌てて空回ったり悩んで落ち込んだりしてしまいがちだが、本書を読んでいると、世の中にはどうしようもない“流れ”があるのだと改めて感じる。この流れを受け入れて動けるかどうかが、猫猫のように前を向いて生きられるかどうかの境目なのだろう。自分の行動を思い返すと反省点だらけだ…。

 2月19日には、最新刊となる4巻も発売され、花街にある実家での猫猫と父親とのやり取り、新たな事件の勃発と解明、そして猫猫による上級妃への“女の園の秘術”教育など、引き続き目が離せない展開となっている。この『薬屋のひとりごと』は、後宮の生活を垣間見てみたいという人だけでなく、仕事や自分が置かれている状況に不満や悩みを抱えている人にも、ぜひとも読んでほしい作品だ。

文=きこなび(月乃雫)