貯金が得意な人と苦手な人の差は「脳」にあった!? ビンボー脳に貯まる癖をつける“ちょっとしたコツ”

暮らし

公開日:2019/3/13

『世界一役に立つお金の授業 頭の中の貧乏神を追い出す方法』(菅原道仁/KADOKAWA)

 貯金が得意な人と、苦手な人。その差が「脳」にあると言われたら、あなたは驚くのではないだろうか。

「実は私たちの脳には、放っておくと浪費したがる癖があります。でも、ちょっとしたコツを知れば、浪費したがるビンボー脳に、お金を貯まる癖を上書きできるんです」

 そう教えてくれるのは、『世界一役に立つお金の授業 頭の中の貧乏神を追い出す方法』(KADOKAWA)を上梓した、菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁さん。脳科学の視点から語る、浪費が止まって貯金が増える脳を手に入れる方法とは?

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■繰り返し行動で、「自然とお金が貯まる脳神経回路」をつくる!

 菅原先生によると、常に大量の情報を処理している脳は、普段は「省エネモード」で動いているという。そのせいで、慣れた行動をするときは、物事を深く考えるのを避けて、自動的に処理する癖があるそうだ。

 例えばあなたには、次のような浪費傾向はないだろうか?

・流行りモノをやたらと買ってしまう
・毎日のように自販機やコンビニで、ペットボトル飲料を購入する
・「安い」と思うと、買いすぎる
・「ちょっとした贅沢」「自分へのご褒美」がやめられない
・友達の誘いや、店員さんのオススメを断れずに、お金を使うことがある

 これらの浪費傾向は、前述した脳の省エネモードに由来している。省エネモードだと「ここでお金を使ったら、後で困るのでは?」といった面倒事を考えるのを避けて、衝動に任せていつも通りの消費行動をしてしまうのだ。おかげで浪費がやめられず、お金はなかなか貯まらない。つまり、浪費がやめられないのは、脳に備わった癖というわけだ。

 ただし、浪費癖のある脳にも、「お金を貯める癖」を上書きすることが可能だという。なぜなら、脳には、特定の行動を繰り返すと、その行動をスムーズに行うための神経回路をつくりあげる「神経可塑性」という仕組みがある。繰り返し練習すると、弾けなかったピアノが弾けるようになったり、話せなかった外国語を話せるようになるのは、神経可塑性で脳に専用の神経回路がつくられるからだ。だとすれば、特定の行動を繰り返すことで、自然とお金を貯められる神経回路もつくりだせるわけだ。

■1-Clickボタンは押さず、カートに入れて放置する

 では、どんな行動を繰り返すと、脳にお金を貯められる神経回路がつくれるのか?

 その行動のひとつが、「1-Clickボタンは押さず、カートに入れて放置する」だ。

 ビンボー脳の人は、「欲しい!」と思うと衝動的に買ってしまう傾向がある。しかし、この「欲しい」という衝動は、ほんの一瞬の間を置くだけで、収まる場合が多いという。

 例えば、ネットショッピングでは、(1)「1-Clickで買う」のように1度の承認で済むケースと、(2)「カートに入れる」→「レジに進む」→「購入する」など数段階の承認が必要なケースがある。面白いことに、(2)を選ぶと、購入を取りやめる人がグッと増えるのだ。なぜだろう?

 実は、脳内で理性をつかさどる前頭前野が起動するまでには、ほんの少し時間がかかる。そのため、「買おう」と決めてから、前頭前野が起動するまでの数秒から数分間、お金を支払わずに待つことができれば、「今買おうとしているものは、必要ないかもしれない」と理性的に考えられるようになるのだ。

 ネットショッピングの際は、1-Clickボタンは押さず、欲しいものをカートに入れたまましばし放置する。リアル店舗では、レジに行く前に、一旦売り場を離れて休憩する。こうした行動を繰り返すことで、ムダづかいに待ったをかける脳の神経回路ができあがっていく。

■毎朝、財布に入っている金額を確認する

 あるいは、「毎朝、財布に入っている金額を確認する」ことを続けるのもいいだろう。

 浪費しがちな人は、自分の財布の中身に無頓着で、いくら入っているかを把握していないことが多いそうだ。入っている金額を把握していれば、「今週使っていい予算は、あと5500円まで」という具合に予算管理ができるが、把握していないとそれができない。そのため、1回の支払いが数百円のコーヒーやお菓子などは、「これくらい使っても大丈夫だろう」と深く考えずにどんどん買ってしまう。

 しかし、毎朝「今日は1万4042円ある」と財布の中身を1円単位まで把握するようになると、「だとすれば、今日使っていいのはこれくらいだな」という予算感覚が芽生えてくる。何度も続けるうちに、「どうせ買うなら、1円でも安いほうがいい」と考えるようになったら、脳に自然とお金が貯められる神経回路ができはじめた証拠だ。

■キャッシュレス社会で、貧乏にならないために

 これからは経済産業省の後押しでキャッシュレス化が進み、現金の「見えない化」が加速する。そのような状況の中、お金に無頓着なままでいると、これまで以上に「自分がいくら使っているのか」が把握できなくなり、ますます浪費することになるはずだ。「気がついたら、ビックリするほど貧乏になっていた」とならないよう、今から本書を読んで、脳に自然とお金が貯まる神経回路をつくりあげておく。そんな気構えが必要だ。

文=天野由貴