■セックスの回数は、夫婦関係に何をもたらす？

　これはよく聞く話ではあるが、世界水準と比較すると、日本人のセックスの回数はかなり少ないようだ。あるコンドームメーカーが2006年に行った調査によると、ギリシャでは週1回以上の性交を持つ人の割合はなんと87％。かたや日本は27％と、かなり少ない結果となった。また、製薬会社が「30～60代」の日本人夫婦を対象に行った別の調査では、年間平均性交回数は17回だったという。

　性交の回数が多ければ良いのかという疑問も浮かぶが、ある研究では「週1回性交するカップルがもっとも幸せであり、幸せな関係には金銭よりも定期的な性交のほうが重要である」という結果も出ているという。

　本書の調査結果によると、日本における「週1回以上セックスをする人」の割合は、前段で紹介したように40代で1割程度となっている。これは世界的にみると極端に少ないとも捉えられそうだ。

■「自慰」回数の統計データから見えてきたのは――

　さて、少し角度を変えて「自慰」の頻度を統計から見てみたい。自慰は、性交と並んで性的活動を表す指標のひとつである。一般的には、性交を活発に行っている人は自慰も活発であるようだ。

　2013年の調査によると、「この1カ月で自慰を行った」と答えた男性は、40代、50代、60代でそれぞれ80％、69％、45％。対する女性は43％、23％、14％という結果だ。

「自慰をする理由」の回答では、男性は圧倒的に「性欲の解消」が多い。しかし女性の場合は、「性欲の解消」とほぼ同じ割合で「快楽」が挙げられ、「やすらぎ」と答えた人も多い。

　本書やその統計によると、この10年でセックスレスは明らかに増加しているが、その反面で「自慰」は活発になってきているようだ。また、男女平等が少しずつ進むにつれ、かつて「夫の性欲に応える」だけだった女性が、自らの性に自由になったという見方もできるという。

　本稿では「日本の中高年は、どのくらい性的活動を行っているのか」という切り口で本書をご紹介したが、本書ではセックスレス問題についても多角的な調査と論考、さらに該当する人々の赤裸々な体験が紹介されている。セックスに対する男女の考え方の違いから、性交痛、ED（勃起不全）、バイアグラといった「中高年のセックス」を語るにおいては欠かせないトピックの解説も充実している。「これから先の性生活」を考える人には、大いに参考になるだろう

文＝K(稲)