「どこでもすぐ眠れる」…は実は危険なサイン!? 「質の良い」睡眠を取る秘訣
公開日:2019/3/10
何かと便利なことが多いのだが、筆者の私はどこででもスヤスヤと眠れる。自宅ではもちろん、旅先などで布団や枕が変わっても、就寝後すぐにコロリと眠りに落ちる。すぐに眠れるというのは、良いことなのだと思っていた、この本に出会うまでは…。
『45歳からは「眠り方」を変えなさい』(田中俊一/文響社)の著者は、生活習慣病の治療に「睡眠」という視点から取り組んできた現役医師。本書は、著者の豊富な経験と知識をもとに、「睡眠が、いかに私たちの生活の質に影響しているか」と「睡眠の質を上げる方法」についてわかりやすく解説してくれる1冊だ。
■良質な睡眠が、生命力を補う
私たちの体が持っている免疫力やエネルギー(生命力)は、加齢とともに弱まっていく。それが表面に出やすいのが40代なのだそうだ。この年代で、急に疲れやすくなったり、体の不調を感じたりするのはそのためだ。
その生命力を日々補ってくれるのが良質な睡眠なのだが、「すぐに眠りに落ちる、寝つきがいい」からといって、“良質な”睡眠が取れていることにはならないという。
睡眠には、深い眠りである「ノンレム睡眠」と、浅い睡眠の「レム睡眠」があり、私たちは睡眠中、約1時間半のサイクルで、この2種類の睡眠を行き来している。このサイクルに入る、つまり、脳を睡眠状態にするには15分ほどかかるという。つまり、それよりも短い時間でコロリと眠りに落ちてしまうのは、「脳がきちんと睡眠状態に入らないままで寝てしまう」ということであり、それでは “良質な”睡眠は取れないのだ。
本書では、この他にも睡眠に関する以下のようなチェックリストが示されている。
□眠り方なんて、何歳になっても同じである。
□多少の寝不足は、時間ができたときに寝て取り戻せばいい。
あなたはどう答えるだろうか? 本書ではこの答えも解説されているので、気になる人はそれにあてはまる章から読み進めていくのもいいだろう。
睡眠の質が上がると、日々の疲れが取れやすくなるだけではない。著者によると、睡眠の質の向上と、肥満・糖尿病・高血圧といった、生活習慣病などの改善には、明らかな相関関係があるという。詳細は、ぜひ本書を手に取って確認してみてほしい。
■まず確認したい「睡眠時無呼吸症候群」の可能性
では、自分の睡眠の質を改善させるための近道はないだろうか。著者によると、それは「自分は“睡眠時無呼吸症候群”ではないか」と疑うことだという。この症状は、空気の通り道である気道がふさがれることで、睡眠時に呼吸が止まる、または非常に弱くなるという症状だ。
もともと日本人は、骨格的に睡眠時無呼吸症候群になりやすい傾向にあるという。現在、日本で治療を受けている人は30万人いるが、著者が、睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病との相関関係から割り出した想定患者数は600万人だという。これによると、睡眠時無呼吸症候群の症状がある人のうち、治療を受けているのは、たった5%ということになる。
睡眠時無呼吸症候群が怖いのは、心筋梗塞などの心疾患で突然死する確率が上がることにつながる点だ。そして、睡眠時無呼吸症候群だと、いくら長く寝ても、質の高い睡眠は取れないままだという。
逆に考えれば、睡眠時無呼吸症候群を改善すれば、睡眠の質は上がり、睡眠の効果が表れやすくなる。本書を読めば、自分だけではなく、家族や友人、同僚などにも無呼吸症候群について心配するようにすすめたくなるだろう。
睡眠は、どんなに忙しい人でも毎日必ず取るものだ。著者によれば、いわゆるエリートになればなるほど、睡眠の質の大切さを理解しているので、良質な睡眠をとるための努力を惜しまないのだという。毎日取る睡眠の質を上げてエナジーチャージすることは、わざわざジムに行って運動したりサプリを飲んだりするよりも、ずっと効率がよさそうだ。自分の睡眠を見直し、質を上げることで、自分の体を覚醒させ健康を保っていこう。
文=水野さちえ