おさえておきたい! 最旬本屋さん&本好き注目スポット7選!
公開日:2019/3/21
入場料を支払い、ゆっくり本を楽しめる書店、猫に囲まれて本を選べる本屋さん、心ゆくまで読書と温泉に浸れるブックホテル――。本好きなら、ぜひとも訪れたい旬のスポットを紹介。次の休日、本をめぐる小さな旅に出かけてみては?
文喫
東京・六本木
入場料1500円。六本木で運命の一冊と恋に落ちる
入場料1500円(税別)を支払って入店する。そんな前例のない本屋が今、大きな話題を集めている。
「本と本屋には、何物にも代えがたい価値があります。心地よい空間とサービスが伴い、本を選ぶ最高の時間を提供すれば、入場料をいただいても成立するのではないかと思いました」
と、文喫を手がける日本出版販売の武田建悟さんは話す。店内には約3万冊が並ぶが、同じ本が複数冊置かれることはない。そのため、平積みされた本を手に取ると、その下には別の本が。宝探しのような感覚で本と出会えるうえ、なぜそれらの本が重ねられているのか文脈を読み解く楽しさも味わえる。選書を担当している副店長の林和泉さんは、その意図についてこう語る。
「本屋に行っても、自分の興味のある棚しか見ない方も多いはず。でも、文喫では興味のないジャンルにこそ足を止めてほしいんです。そのため、1冊開いたらまた次の1冊と、お客様の興味が数珠つなぎのように連なるよう本を選んでいます。店内で1冊読み切ったとしても手元に置いておきたい本ばかりなので、回遊しながらじっくり棚を掘っていただきたいですね」
土日は入場制限がかかることもあるが、平日午前中または18時以降は狙い目。制限時間はないため、コーヒーやお酒を楽しみながら運命の本探しに耽りたい。
東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F
9:00~23:00(L.O.22:30)不定休 TEL03-6438-9120
箱根本箱
神奈川・強羅
休日はホテルにこもり、読書&温泉で癒やしのひとときを
本に囲まれ「暮らす」ように滞在できるブックホテルが、箱根・強羅温泉に誕生した。約1万2000冊の本は、衣、食、住、遊、休、知を中心に選書され、ラウンジやレストラン、ショップなどに配置されている。館内で自由に読めるのはもちろんのこと、気に入った本はすべて購入することもできる。
さらに、辻村深月、西加奈子、恩田陸、横尾忠則、松尾スズキ、山田孝之ら本好き著名人による選書企画「あの人の本箱」も実施している。客室を中心に館内の様々な場所に設置され、どの本と出会うかは泊まってみてのお楽しみ。読書好きなら本を携えて旅行に出かけることはよくあるが、このホテルにはぜひ手ぶらで訪れたい。旅先で、思いがけない本と出会う喜びを味わえる。
静かな空間でゆったり読書を楽しみ、疲れたら温泉へ。そんな極上の休日を過ごすなら、このホテルが最善の選択肢だ。
箱根本箱神奈川・強羅
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-491 TEL0460-83-8025sv
宿泊料金:1泊2食1万8321円(サービス料込・消費税別・入湯税別)〜
(2名利用時の1名料金)
写真集食堂めぐたま
東京・恵比寿
おいしい食事と5000冊の写真集。世界への扉がここにある
壁を埋め尽くすのは、5000冊もの写真集。写真評論家・飯沢耕太郎さんの蔵書が並ぶこの店は、食事を楽しみながら写真集を眺められる食堂だ。年代順、作家別に並んだ写真集の中には、稀少性の高い本も。汚れないか少し心配になるが……?
「写真集は、あくまでも見て触って楽しむものだと思うんです。きれいに保存するのもいいですが、テープを貼って修繕した跡があるのも多くの人が見た証し。それにみなさんとても丁寧にご覧になるので、食べこぼしなどはほとんどありません。お茶やお酒を飲みながら、リラックスしていただければ」
そう話すのは企画・広報担当のときたまさん。写真集を身近に感じてほしいという思いを込めて、お店の運営にかかわっている。
「写真集は短時間で見られますし、言語を問わずに楽しめます。それに、世界中のあらゆるものがテーマになっています。自然、戦争、暮らし、鉄道、猫……誰が来ても興味を引くものに出会えるはず。世界への5000の扉がここにあるんです」
飯沢さんによるポートフォリオ・レビュー、ヨガ、落語と江戸料理の会などのイベントも随時開催中。写真集はもちろん、人との出会いも期待できそうだ。
東京都渋谷区東3-2-7 1F
平日11:30~23:00(L.O.22:00)土日祝12:00~22:00(L.O.21:00)定休日:月(月曜日が祝日の場合、火曜日が休みとなります) TEL03-6805-1838
Readin’ Writin’ BOOK STORE
東京・田原町
読む、書く、集う。本を通じて人と出会える書店
新聞記者として30年以上のキャリアを重ねた落合博さんが2017年、Readin’ Writin’ BOOK STOREをオープンした。食、言葉、女性の生き方に関する本、文芸書など、取り扱う本は約3500冊。すべて落合さんが自分の目で選び、買い取ったうえで棚に並べている。店づくりにあたり、念頭に置いているのは「出会いがしらの衝突をいかに起こすか」
「棚を見て『こんな本、見たことない』と喜ぶ方も多いのですが、どの本も一度は大型書店で売られていたはず。日の目を見ないまま眠っていた書籍の中にも、面白い本はたくさんあります。そういった本を時間をかけて売っていければと思います」
記者の経験を生かし、ライティングの個人レッスンを行ったり、著名ライターを招いた講座を開いたりすることも。店名どおり〝書く〟ことにも力を入れている。
「読むことと書くことはつながっていると思うんです。小規模な店ですが、書くことに関する本も充実しています。イベントを開いたり、お客様とコミュニケーションを取ったりすることも多いですね。ただ本を売るだけでなく、人が集まる場をつくっていきたいです」
東京都台東区寿2-4-7
12:00~18:00 定休日:月 TEL03-6321-7798
Cat’s Meow Books
東京・三軒茶屋
4匹の看板猫がお出迎え! 猫本尽くしの本屋さん
4匹の猫たちがまどろんだり、本の間を気ままに歩き回ったり。そう、この店は猫に会える本屋さん。保護猫を迎え入れ、看板猫として店に出てもらう代わりに、書店で得た売り上げの一割を猫の保護活動に寄付している。さらに、販売している約2500タイトルの本は、新刊・古本を問わずすべて猫が登場するものばかり。店主の安村正也さんが本をチェックし、どこかに猫が出てくるものだけを仕入れている。
「最近は『この本はきっと猫が出てくる』という勘が働くようになりました(笑)。海外の短編集はなぜか猫の登場率が高いんです。時には、お客様から教えていただくことも。『猫の本を買うならここで』という方も増えています」
平日は会社員として働きながら、本屋を営む安村さん。新たに本屋を始めたいという人に向けた情報発信にも熱心だ。
「趣味とビジネスの中間ぐらいで、肩の力を抜いて個人書店を始める方が増えていますよね。業界シロウトでも本屋をつくれると知っていただき、本屋を始めたい人の背中を押すきっかけになれたらうれしいです」
東京都世田谷区若林1-6-15
平日・土14:00~22:00頃 日14:00~20:00頃 定休日:火 TEL03-6326-3633
せんぱくBookbase
千葉・八柱
千葉に文化の柱をつくる。約10名の店主による“シェア本屋”
せんぱくBookbaseは、古い社宅をリノベーションしたシェアアトリエに誕生した本屋さん。絵本のオンラインショップを営む絵ノ本桃子さんがオーナーだが、店主は彼女ひとりではない。約10名で棚と店守り(店番)を分け合う〝シェア本屋〟という形を取っている。
「千葉で子育てをするにあたり、この地域の文化って何だろうと考えたんです。ある文化で育った子には、ひとつの軸が生まれます。でも、私が住む地域には、軸となる文化が見えなくなっていました。本屋があれば、そこに文化の柱ができる。それなら私が本屋をつくろうと思ったのが、最初のきっかけでした。とはいえ、ひとりで運営するにはリスクが伴います。そこでTwitterで仲間を募ることにしたんです」
働き方の本、言葉の本、コミックなど、店主によって扱う本もさまざま。新たな店主も募集中だ。
「条件は月額7000円、月2回お店に立つこと。そして仕入れや選書を実践できること。私の理想は、通学路に一軒本屋がある状態。この店を巣立った方が、別の町に本屋を開いてくれたらうれしいですね」
千葉県松戸市河原塚408-1 せんぱく工舎d号室
営業時間はTwitterアカウント@bookbase1089参照 不定休
16の小さな専門書店
千葉・千葉
本への興味を引く丁寧な動線づくり。千葉の情報発信地
文芸書を集めたみみずく書房、女性の本が並ぶ書房らいてう、詩歌を扱う文鳥堂……。鳥にちなんだ名前の16の専門書店がワンフロアに集まった、その名も16の小さな専門書店。ミニシアター、甘酒ジュースが飲めるカフェも併設されている。
文芸書や文庫の売り場では、店長の鈴木毅さんがつくった作家の紹介POPを展示。有名作家に交ざってそこまで知名度が高くない海外作家も取り上げられ、好奇心がうずく。
「全く知らない作家の本を、棚から抜き取ることはあまりないですよね。本を買う時には『ハズしたくない』『読んでいて恥ずかしくない本だろうか』という気持ちが働くもの。そこで作家のプロフィールや写真を掲示し、まずはこれを押さえれば大丈夫という本を示すことで、知らない本でも安心して読んでもらえるようにしています」
他店を巻き込んだフェアを開催したり、フェアに合わせてブックリストをつくったり、さまざまな仕掛けも展開。訪れる人の反応も上々とか。
「千葉にある店は、東京の支店というケースが多いんです。でも、この店は千葉にしかありません。お客様もそのことを喜んでくれています。『ここに来れば何かが見つかる』という発見を大切にしていますので、ぜひ遊びに来てください」
千葉県千葉市中央区新町1001
そごう千葉JUNNU 3F 10:00~20:00 TEL043-306-6781
取材・文=野本由起 写真=高橋しのの(箱根本箱を除く)