どんだけ理想の上司だよ…!「今どきの若いモンは」に続くセリフに悶絶必至のお仕事マンガ
公開日:2019/3/17
「今どきの若いモンは…」若手会社員の皆さん、この枕詞を聞いて「また説教か」と思うなかれ。これこそ仕事がやる気になる魔法の言葉であり、話題のお仕事マンガのタイトルなのだ。この『今どきの若いモンは』(吉谷光平/講談社)をレビューしていく。
癒され励まされやる気が出る! 「今どきの若いモンは」は魔法の言葉
この作品をちゃんと読んだことがなくても、この絵とタイトルでもある「今どきの…」というセリフは見たことがある方がいるかもしれない。
それというのも、本作はTwitterで「25万いいね」を獲得。新入社員や若手社員だけではなく、幅広い社会人たちから共感を集め話題になったからだ。
作者は『ナナメにナナミちゃん』や『あきたこまちにひとめぼれ』も手掛けた吉谷光平氏。
数年前から、友人のマンガ家たちとTwitterでマンガをバズらせる勝負をやり始めた。そこで反響があり、出版社やWebメディアから仕事が来るようになったそうだ。
そして本作の第1話が、前述の通り大きくバズったのだ。
物語の舞台は総合商社と思われる会社である。主人公の麦田歩(むぎたあゆみ)はそこで働く新入社員だ。やる気はあっても、仕事はまだまだ上手くこなせていない。
ある日、歩は心が折れそうになりながら残業をしていた。すると彼女に、上司の石沢一(はじめ)が声をかける。
「今どきの若いモンは真面目に働きすぎなんだよ
ワシらの若い頃は過労死なんて言葉なかったからな
あとはやっとくからさっさと帰れ」
この言葉に心の底から感激し、歩は叫ぶ(心の中で)
か……課長おおおおッ! ! ! !
本作は基本的にほぼこの流れである。さまざまな「社会人あるある」で、壁にぶつかり悩む歩たち若手社員の前に、石沢課長がさっそうと現れ、水戸黄門の印籠のように、「今どきの若いモンは」を言い放つ。
「若いモン…」のあとのセリフは必ずポジティブなもので、言われた若手社員たちは歩のように感激し、ホッとし、仕事に対して前向きになるのだ。
石沢だけじゃない! 魅惑のおっさん上司たちが登場
作者の吉谷氏によると、驚くほど女性ファンが多い作品なのだという。歩のように苦労している女性社員もいるだろうが、石沢をはじめ、格好いい「おっさん」(石沢談)たちが魅力的に描かれているのも人気のポイントだろう。
歩たちだけではなく、彼ら「おっさん」上司たちがどう成長してきたのか、そして現在の葛藤や苦悩なども丁寧に描かれている。
風間部長は、石沢課長の同期。口が悪く豪快な性格だ。若手の頃から石沢とは良きライバルであり友人だった。
風間はある出来事をきっかけに、真面目に働く仲間が「ばかをみる」ことがない会社にする! と使命感に燃え、より昇進を望むようになった。風間は、石沢はもちろん若手社員に信頼をおく良き兄貴分である。
また石沢の部下だった恵比寿課長は、歩たち若手に恐れられる厳しい上司だ。口癖は石沢と同じく「今どきの若い人は…」である。しかし彼はこの言葉を否定的に使い、パワハラぎりぎりとも思えるマネジメントを行っていた。
そんな恵比寿は、あえて厳しくしていたことが明らかになる。恵比寿は自分を含めて、会社員のほとんどは天才ではなく、凡人であることを理解していた。そして多数の凡人が会社を支えていることも。
凡人が成長するには、言葉づかいや身だしなみなど、誰でもできることを最大限に努力するべきだと考え、若手にそれを求めていたのだ。ただこの思いが伝わらないことに、もどかしさを感じていた。
先日発売された第2巻には、石沢や風間の上司だった人物が登場。おっさん上司たちの過去エピソード編がスタート。シリアスなストーリー展開となっている。
理想の上司が社会人の「明日への活力」になる
本作の上司たちはしょせん理想の上司…とわかっていても、石沢のセリフは厳しい環境で働く私たちのハートをキャッチし、癒してくれる。
「こんな風に励まされて、やる気になりたい…(切実)」と、本稿のライターのようなベテラン社会人でも心の底から思えた。
未読の方は、本作を読んで癒され励まされ、ぜひ明日の活力にしてもらいたい。
文=古林恭