三日坊主でもOK。恋愛や趣味は中途半端でも長続きしなくてもいい。そのワケは?
公開日:2019/3/20
何をやっても長続きしないと、「自分はダメな人間だ…」と感じられてしまうもの。日本では「三日坊主」は好まれにくく、一度決めたことは最後までやり遂げなければならないという考え方が一般的のように思える。しかし、我慢を重ねて自分を強く規制していった先に笑顔の未来が見えないのならば、“長続きさせること”に一体なんの意味があるのだろうか…。
そんな疑問について改めて考えさせてくれるのが、心理カウンセラーの石原加受子さんが手がけた『「何をやっても長続きしない人」の悩みがなくなる本』(イースト・プレス)。本書は、私たちが抱えている思い込みを取っ払い、心の負担を軽くしてくれる1冊だ。
「中途半端はダメ」「三日坊主はよくない」…普段からそう考え、完璧を求めてしまう人は本書の内容を噛みしめ、心の本音に素直になってみよう。
■「長続きさせなければ」は、単なる思い込み
何かを始めるたびに人は、無意識のうちに「長続きさせなければならない」と考えてしまう。石原さんはこの考え自体が“思い込み”であると指摘し、この思考を変えていく必要があると投げかける。
“あたかも自分が人間失格であるかのように思えてしまうのは、ほんとうは、単に他者中心に陥ってしまっているからかもしれません”
「他者中心」とは、自分の判断と行動の基準を他者に求めてしまうこと。自分がどう思うかより、自分の言動が相手にどう受け止められるのかに重きを置いてしまうため、相手の一挙一動が気になり、自信をなくしてしまう。すると、他人と自分を比較し、「みんなはできているのに、私は続けられない…」と、長続きさせられない自分をダメな人間だと思い込んでしまうのだ。
だが、全てのことを完璧に、完全にやり遂げられる人などこの世にはいない。私たちは「中途半端ではない状態」や「完璧な状態」を目指そうとしてしまいがちだが、そんな理想は叶うことのほうが稀である。「中途半端ではない自分」を求めるのは、実はゴールのないゴールを目指すのと同じことなのだ。
「中途半端な状態の自分」ばかりにスポットを当てるのではなく、どんな些細なことでも「できた自分」をしっかりと認めてあげよう。
“コミックを最後まで読み終えた。本を最後まで読み終えた。ゲームを最後までやり遂げた。こんなふうに、私たちは「最後までやり終える」ことを無数に体験しています”
本書のこの言葉は、ネガティブな自分の思考癖に気づくきっかけとなるだろう。自分の心を犠牲にするほど辛いことならば、やめてもいいし続ける必要もない。あなたは自分の価値観で幸せになっていいのだ。
■人間関係が長続きしないワケは?
本書は仕事や恋愛、趣味、人間関係などが長続きしない人に対し、斬新な視点でアドバイスを送る。中でも筆者の心に響いたのは、人間関係にまつわるアドバイスだ。
初対面で意気投合したのに、その後の人間関係がなぜか長続きしない…。そんな経験をしたことがあるのは筆者だけではないはず。交友関係が長続きしないと、自分が魅力のない人間のように思え、情けなくなる。だが、実は人間関係が長続きしないことにも思考の癖が大きく関係しているそうだ。
例えば、あなたは円滑な人間関係を築いていきたいと思った時、周囲の雰囲気を読んで動こうとしたり、空気を壊したりしないよう、気配りしすぎてはいないだろうか。「他人に気に入られたい」「誰かに嫌われるのが怖い」という気持ちが強いと、私たちはつい自分を偽ってしまう。だが、素の自分を出せないと心が疲れてしまったり、深い人間関係が築けなかったりして、結果的に自分で自分の首を絞めることになってしまうのだ。
こうした状況に陥らないためには、逆に「人付き合いは長続きさせなくてもいいんだ」と自分に言い聞かせながら人間関係を築いていこう。自分をよく見せようとしすぎず、相手に合わせたり、我慢したりしなくても成り立つ関係を築くことを目標にしてみてほしい。
また、完璧主義になりがちな人は、他者に対しても厳しくなってしまう傾向があるので、相手を美化しすぎないように注意が必要だそう。現実の自分と理想の自分の間に溝があるのと同じように、現実の相手と理想の相手像にも違いがあるのは当然のこと。理想を押しつけないようにするには、自分にやさしくして、思い込みを変えていくのがおすすめだ。
自らストレスや苦労を背負い込むのではなく、もっと楽で心地よい生き方、満足できる生き方をしていこう。そう訴えかける本書には、人生をポジティブに変えてくれる力がある。辛いことに耐え、必死に頑張り続けるだけの日々は、もう終わりにしてもいいのだ。
文=古川諭香