男よ「孤独」を恐るな! つるまない男だけが手にする一生の戦友と救いの女神

暮らし

更新日:2019/4/3

『新版 「孤独」が男を変える』(里中李生/フォレスト出版)

 友達が多く、いつも楽し気に仲間内の飲み会の様子をSNSにアップする男。私の周りにもたくさんいる。いや、「いた」と言った方が適当だ。そのような男とは次第に会う機会が減った。

 筆者は男だが、昔から「集まる」「群れる」「つるむ」というものがとりわけ苦手だった。交友関係と言えば、奇跡的に感性の合う男友達とサシで議論を交わすか、あとは女かくらいだった。今は、女と郊外に籠って細々と、いつの日か東京で一花咲かせたいと思いながら、日々執筆やその他諸々の仕事をしている。

「孤独」とは何だろう。迷いはないと思っていても、たまに揺らぐ。年齢が若いとなれば尚更、インターネットに接した瞬間、自分が恐ろしく惨めに感じる瞬間がある。なぜか。それは、特に20代のうちは「友達に囲まれていて、毒がなくて無害で、ノリが良くて、集団に馴染める男」の方がモテるし、マジョリティの眼には好意的に映るからだ。

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「男」として自分と他人を相対化して不安に襲われそうになった時、私を救ってくれた1冊の本を、同胞の男に向けて紹介したいと思う。『新版 「孤独」が男を変える』(里中李生/フォレスト出版)だ。

 辛口な自己啓発でコアなファンも多い著者。「男女平等」になにかと注意を払わねばならないこのご時世に真っ向から立ち向かう内容の本書だが、かなり「男」の本質を捉えているように感じられる。

■飲み会を繰り返す男はバカになる

 セミナー後の飲み会、サッカーのサポーターたちの試合後の飲み会、定期的な会社の飲み会、学生時代の仲間の飲み会、地元友達の飲み会…。飲み会に忙しい人は、どうしてどこか誇らしげなのだろうか。

 酒を飲んで騒ぎ、「俺には仲間がいっぱいいる」と思い込み、それを繰り返し実行する生活が、あなたの成功を妨げている。本書の著者はそう語る。孤高の闘いを強いられるトップアスリートが「仲間に支えられた」と口にするが、それがノリだけの飲み会を繰り返している感覚とはまったく違うことは一目瞭然だ。

 いまさら「友達を作りたい」なんて言わず、もうあきらめて、孤独に闘う仕事をするか、たった1人の理解者を作ればよいのだ。さらに言えば、運命の相手や一生の戦友といった「奇跡の出会い」が、段取りのついた飲み会やSNSから生まれることは、あまり期待できない。

■孤独な男には、救いの女神が現れる

 お金で一時のセックスは得られるが、継続する愛情と快楽を1人の女から受け取る歓びはお金では買えない、と著者は説く。

 たとえば、あなたが一生懸命働いていた会社から、なぜかリストラされてしまったとする。その時に「情けない人」と言って去って行くような女は、打算的に生きている冷血な女であり、あなたが本物の男である場合、そのまま別れた方が賢明だ。

 ただ世の中には、「ゆっくり休んで」と優しく笑い、落ち込んでいるあなたに特別なことをしてくれる女神のような女性もいるのだという。その無償の愛情を受けあなたは、「この女のためになんとかしたい」と思うはずだ。まさに、絶望の中の光のような存在だと言えよう。

彼女たちは、孤独に泣いている男に惚れる。
正確に言うと泣いてはいないのだが、孤独なまま仕事を続けている男である。
仲間とワイワイやっている男には寄り付かない。
孤独と闘っている男には、孤高のオーラがあり、しかしどこか疲れている。(本書230頁)

 孤独によって成熟した本物の男は、目の前に現れた女神のような女を大事にして、さらに闘い続けていくのだ。著者はそう締める。

 実を言うと、私は本稿を作成する過程で、初めは「群れる男」に向けて記事を発信しようと考えた。しかしそのような体質の男には本書の神髄はかすりもしないのではないかと思い直し、敢えて「現状孤独寄り」の男性に向けて執筆させて頂いた。

 冒頭でも述べた通り、私も孤独体質だ。似た者なら分かるはずだが、孤独な男の「友」は、その多くが本や芸術だ。私はまだまだ未熟ゆえ、孤独の不安で押しつぶされそうになる夜もある。情けないことに、揺らいだ心のままSNSに張り付き、友人の近況をだらだらと眺めるだけの夜もある。ただ、そこに本物の友はいない。

 本書は私をそんな無為な夜から救い出してくれる、最良の友のうちのひとつである。

文=K(稲)