落合陽一×小泉進次郎が語る! 政治や議員のアナログ体質が日本の未来を狭めている!?
公開日:2019/3/27
少子高齢化と言われても、なかなか実感が伴わないという人も多いだろう。しかし、人口統計データはシビアだ。現在の40代、つまり社会のいろいろな面で要となる世代の人口は現在、1868万人(総務省統計局の人口推計データ2019年2月報より)だ。一方、0~9歳人口は998万人(同)。つまり40年後、40代人口は現在の53%、約半数近くにまで減少するのである。日本が迎える少子高齢化のリアルが実感できるデータではないだろうか。
そんな近未来の日本が抱える課題は他にもある。「労働生産性が47年連続、主要先進7カ国(G7)で最下位」(公益財団法人・日本生産性本部2018年12月発表)、教育、社会保障、財源の確保…少子高齢化が加速する中で、さまざまな課題を日本はどう解決し、成長の道筋を見つけていくのか?
■日本の未来を明るく照らす「ポリテック」とは?
新世代の論客、メディアアーティストの落合陽一氏によれば、カギを握るキーワードは「ポリテック」であるという。では、ポリテックとはいったい何か、著書『日本進化論』(SBクリエイティブ)よりその主張を紹介していこう。
ポリテックは、「ポリティクス(政治)とテクノロジー(技術)」を掛け合わせた造語で、発案者は、落合氏と親交も深く、本書にも登場する小泉進次郎議員だ。小泉氏によれば、ポリテックとは「政治・政策・経済の論点に、テクノロジーの観点からの考察を加えること」。つまり、最新技術により政治的課題を解決していく試みだ。
その落合×小泉対談で幕を開ける本書は、落合氏主宰で昨年夏に開催された討論イベント「平成最後の夏期講習」の内容を下敷きにして落合氏が大幅加筆したものだ。
ポリテックをキーワードに、「次の時代へのパラダイムシフト」「働き方」「超高齢社会」「子育て」「教育」「社会保障・財源」「スポーツ&well-being」などのテーマについての落合氏の提言に加え、他の識者の意見のまとめやコラムもある。
落合氏の視点だけでなく、その他の識者の考え方や最新技術の実例なども幅広く吸収できるのが本書の特徴だ。
■最新技術が働き方の多様性を実現させる
では、私たちのビジネス・働き方は、今後テクノロジーによってどう変わるのか。落合氏の意見を紹介していこう。
まずビジネスでは、最新技術が「限界費用の低減化を実現させる」と落合氏は指摘する。限界費用とは、モノを再生産する際のコストである。製造業では、モノを追加生産するには人件費や製造コストなどの限界費用が発生する。対してアプリビジネスなどは、初期投資はかかるものの、ひとたび完成したらバージョンアップ等までは、同じものを提供し続けられるので、限界費用を低減させた収益率の高いビジネスとなる。
そこで、製造業他、これまで限界費用がかかっていたいろんな産業分野においても、3Dプリンタやデジタルファブリケーションなどの技術を、ポリテックとして国が推進、普及させることで、限界費用の低減化=高収益化が実現できると、落合氏は指摘する。
また、先端技術は、働き方における「ダイバーシティ(多様性)の実現」も可能にするという。著者は、リモートワークツールの先進的な例として、分身ロボット「OriHime」を挙げる。このロボットには、カメラ・マイク・スピーカーが搭載されており、家や会社など行きたいところに自分の分身として置き、インターネットを通して操作ができる。例えば、病気で長期入院したり、自宅作業をする際、このロボットを会社に置いておけば、あたかもそこにいるかのように会社の人とコミュニケーションできるのだ。
■政治の現場では驚くほどアナログな慣習が続いている
このように最新技術をいろいろな分野で積極的に活用できれば、課題解決の可能性が高いポリテックだが、なぜ、なかなか国は推進させないのか。
落合氏との対談で小泉氏は、「低レベルの話だが」と前置きしたうえで「国会や議会の場では、いまだにパソコンの持ち込みすら厳禁」といった現状や、紙資料の配布を止めてFacebookで情報共有をしようとしたら、周辺議員から「紙を地元支持者に配る秘書の仕事を奪うな」と猛反発を食らったエピソードなどを明かしている。
つまり、政治の現場では驚くほどにアナログな慣習(高齢者よりの政策を優先しがちな点なども含む)が根強くあり、それが延いては、日本のポリテック社会の実現を根底から阻んでいるという可能性を両者は指摘する。
本書には、ポリテックが可能にするさまざまな明るい未来が描かれている。一方で、若年世代が政治に無関心のままでは、未来を見据えたポリテック政策は遅々として進まない可能性も示唆されている。
そこでぜひ、本書でポリテックを学びつつ、選挙に行こう。そして、政策・技術・人が三位一体となったポリテック社会で、活路を見出してみよう。日本の未来は決して暗くなどないはずだ。
文=町田光