事故物件を見抜く5つのポイント――ブラック大家との戦いはこれからも続く…
更新日:2019/4/4
4月からの新生活に向けたお部屋探し。GWを使って引っ越しをしようと考えている人もいるかもしれない。だが、「家賃が安くて好条件!」と思って飛びついたら、事故物件だった…なんてことも少なくはない。どうしたら事故物件をつかまされずに済むのだろう。新生活を気持ちよくスタートさせるべく、事故物件を見抜く方法を伝授しよう。
この春、引越しも終えて心機一転、新生活をエンジョイ中の人も多いだろう。しかしちょっと待ってほしい。あなたのその物件、「ワケあり」じゃないと言い切れますか…? 読み終えると、ふと自分の住む物件のことが気になり始めてしまう本、それが『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(菅野久美子/彩図社)だ。
本書でいう事故物件とは、自殺・他殺・病死・孤独死など、借主が室内で死亡したことで空室・空き家となった物件のこと。本書は、そんな事故物件に関する情報がギュッと詰まった「All About 事故物件」なのである。
案内人の大島てるとは、インターネット上で事故物件情報を公示するサイト名かつ、運営会社名であり、代表者の個人名でもある。その事故物件専門家の大島氏からの情報やコメントが本書をサポートする。
20代大家の会主催「0円物件見学ツアー」に行ってみた
第1章では、不幸が連鎖するワンルームマンションや事故物件に住んでみたライターの話など、10件の事故物件エピソードが紹介される。中でもユニークなのが、「0円の物件を覗いてきた!」と題されたエピソードだ。
「0円物件見学ツアー」を主催したのは、不動産投資により20代で脱サラを目指す「20代サラリーマン大家の会」という投資家団体。資金力がまだ乏しい彼らにとって、事故物件は格好の投資対象なのだ。0円の理由は「部屋の状態が悪いこと、老人の男性が孤独死をして死後一ヶ月経った事故物件であるから」。
そんな彼らは現在、この事故物件をヨーロピアン風のおしゃれな部屋にリフォーム中らしいが、契約時には借り手に事故のことを伝える「告知義務」を果たすのだろうか…?
民間業者では「孤独死の場合は告知しない傾向が強い」?!
そんな疑問に答えるべく、第2章では事故物件の法的な定義、不動産会社の扱い方や過去に貸主と借り手の間でトラブった際の判例などもまとめられている。例えば、先の0円物件のように「孤独死」物件は、買い手・借り手に対してどう情報が公開されるのか?
本書が伝える事実は、いささか衝撃的だ。なぜなら、公営住宅やURであれば「特別募集住宅」として入居者を募り孤独死も告知する。対して民間の不動産会社は、「孤独死の場合は告知しない傾向が強い」と明かすからである。そして当然ながら、家賃の割引等の特別措置もない。大島氏も「孤独死を教えてくれるのは良心的な業者」で少数派だと語る。
ちなみに、賃貸物件の検索サイトなどで「告知事項あり」や「心理的瑕疵(かし)あり」という特記事項を見かけたら、それは事故物件である可能性が高いそうだ。その場合、家賃は2割から半額までの幅で減額されるが、規定の年数を経て通常家賃に戻ると本書は教えている。
「事故物件を見抜く目」を養うためのチェックポイント
また賃貸の場合、殺人・自殺・孤独死であれ告知義務が発生するのは、次に借りる1人目まで。2人目以降の借主には告知義務はないという。となれば、これからアパマンを賃借 する人にとってベストなのは、「事故物件を見抜く目」を養うことだろう。
本書では、大島氏が物件を訪れた際の重要なチェックポイントをいくつかあげている。
・他の部屋に比べて異様にリフォームされている
・通常は行わないフローリングの総取り替えが行われている
・浴槽ごと新品になっている
・アパート名やマンション名が最近、急に変更された
・家賃が相場よりも安い
こうした賃貸物件は、事故物件である可能性が高いと大島氏は指摘する。もちろん上記に該当するからといって、必ずしも事故物件とは限らないそうだが、関心のある方はぜひ、本書で詳細を読んでほしい。
本書には他にも、いろんな人物が登場する。霊感の強い特殊掃除(死体の痕跡・臭いや遺品等を清掃する仕事)人や、事故物件専門の不動産会社を営む女性社長は、物件をまず自ら護摩焚き等で清め、事故の連鎖が起こらないよう祈祷することなども語られている。
しかしなぜ、大島てるはインターネットで事故物件情報を公示するのか。その思いが本書のある場所に密かに記されていた。それは本書のカバーを外すと現れる、文庫本お決まりの茶色い表と裏表紙だ。そこに「大島てる 特別寄稿」と題された文章がある。
それを読むと、サイト「大島てる」が掲載した事故物件情報をめぐり、ある不動産会社と裁判沙汰になり、大島てるが勝訴したことが記されている。つまり、事故物件の事実を公示することで、不動産業者の隠蔽体質を改善させることが、大島てるの目的なのだ。その寄稿の最後はこう締めくくられている。
ブラック大家との戦いはこれからも続くのです──。
文=ソラアキラ