eスポーツの「なぜ?」を全解剖! 「なぜゲームがスポーツ扱い?」「五輪種目になるって本当?」

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更新日:2019/4/5

『eスポーツ論 ゲームが体育競技になる日』(筧誠一郎/ゴマブックス)

 近ごろ「eスポーツ」という言葉をよく聞くようになった。eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、電子上で行われる競技――すなわち、テレビゲームやPCゲームを用いた、競技性のあるものを指している。eスポーツは、海外を中心に大きな盛り上がりを見せているのだが、日本ではまだこれからという段階だ。おそらく、ゲームをあまりしない人たちにとって、eスポーツの認識は、「ゲームなのになぜスポーツなの?」という印象で止まっているかもしれない。だが、本書『eスポーツ論 ゲームが体育競技になる日』(筧誠一郎/ゴマブックス)は、遅くとも2028年までに、eスポーツはオリンピック競技になると予測している。実際のところ、eスポーツはどれほど盛り上がっているのか。日本の現状だけでは見えにくいその実態を、本書は詳細に解説していく。

■大きな大会は賞金もスゴい! 世界には“2億円プレイヤー”も!

 eスポーツの大会は、すでにかなり大きな規模にまで成長している。人気ゲーム「Dota 2」の世界選手権「The International」は、ゲーム内課金アイテムの25%を賞金に上乗せするシステムを取り入れた結果、賞金総額が跳ね上がった。2017年の賞金総額は、なんと2400万ドルを超えたそうだ。賞金総額が増えるにつれて、それに関わるプロゲーマーたちの年収もあがる。2017年の高額賞金獲得プレイヤーランキングでは、上位5人が200万ドル超え…すなわち、“2億円プレイヤー”となっている。彼らの収入は、大会でもらえる賞金に加え、所属チームからの年俸や個人スポンサー配信収入などもあるから、実際にはそれ以上だろう。

■日本にいるプロゲーマーは約300人、その生活は?

 プロゲーマーは、日本にも約300人いる。本書によれば、eスポーツだけで食べていけるという“専業プロ”が約100人、他にも仕事をしている“兼業プロ”が約200人いるという。彼らの生活スタイルは、野球選手やサッカー選手とそう変わらない。彼らは、ただ毎日ゲームをプレイするだけでなく、対戦相手の分析や戦術の研究などを行い、自分の技術に日々磨きをかけている。また、eスポーツは、体力やメンタルのコンディションも勝敗に大きく関わってくる。そのため、ジムで肉体的なトレーニングに励むプレイヤーも多い。さらに、先述の「Dota 2」などでは、チームのメンバーで合宿を行うこともあるのだとか。

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 筆者のeスポーツに対する印象は、本書を読んでガラリと変わった。こんなにも、ストイックな世界だとは思っていなかった。プロゲーマーは、大会で勝ち、観客を喜ばせるために、日々ライバルたちと切磋琢磨している。その真剣さは、現在オリンピックに採用されている競技のそれと変わらない。2024年のパリオリンピック委員会が「eスポーツを正式種目にしたい」と申し出た。少し前までは、「ゲームがオリンピックの競技になる」ということは、誰も想像できなかっただろう。だが、本書を読み終えた今、近い将来そのときがやってくることを確信する。

文=中川凌