授業参観に出る親は増えた? 減った? 平成30年間で家族の価値観はどう変化したか

社会

公開日:2019/3/28

『生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化』(博報堂生活総合研究所/日本経済新聞出版社)

 いよいよ平成も残りわずか。大型連休の出現に戸惑いつつ、平成という時代を振り返る企画がさまざまなところで見られる。そんな中のひとつ『生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化』(博報堂生活総合研究所/日本経済新聞出版社)から、この30年を振り返ってみたい。本書は、首都圏・阪神圏の20歳から69歳の男女を対象に1992年から隔年で調査を行ってきたデータを総括したものだ。

 本書の特徴は、平成に起きた事件や出来事を振り返るのではなく、私たちの価値観がこの30年間でどのように変わってきたかにスポットを当てていることだ。価値観というものは目に見えないので、その変化はなかなか気付きにくい。無意識のうちに、あるいはいつの間にか変わっていたということもあるだろう。そんな価値観の変化が、データという目に見える形で表されているのだから、後世まで役に立つ1冊であるに違いない。では、早速その一部を読んでみよう。

■キーワードは「今、ここ、身近な幸せ」

 平成は、昭和に比べると、戦争もなく高度経済成長もなくと、大きな出来事を意識しにくい時代だ。高齢化や給料が増えないという、なだらかな社会の停滞があり、明日が今日よりも良くなるとはなかなか思えない時代。しかし、だからといって急に明日生命存亡の危機が訪れるとも思えない時代。

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 このような中、私たちの意識は、将来の成功のために今を我慢するのではなく、今幸せを感じようと変化してきたようだ。具体的なデータを見てみよう。平成の初めからリーマンショックの2008年までは、「いやなこと・腹の立つことが多い」と感じる人の方が、「楽しいことが多い」と感じる人より多かった。

 だが、その後で両者は逆転。2018年には「楽しいことが多い」44.5%、「夢や希望が多い」26.6%であり、「いやなこと・腹の立つことが多い」36.8%を上回っている。

■意識して家族になる、家庭内では「子ども」がキーパーソン

 家族意識の調査では、「子どもは親の老後の経済的な面倒を見るほうがよいと思う」「年をとったら、子どもと同居したいと思う」と思う人は減っているというデータが出ている。その反面、10年前と比べると、結婚している男女が、その両親(同居ではない)に対して「自分の家族である」という思いは高まっている。

 自分個人のペースは保ちつつ、迷惑を掛け合わない範囲で、親子が仲良くしていきたいという意識が強くなっているようだ。

 また、共働きが広がり妻の役割は増している一方で、「子どもの授業参観や運動会などの行事には必ず行く」と答える人は1988年には男性30.9%、女性62.6%だったのが、2018年にはそれぞれ58.7%、83.7%と男女どちらも大きく増進。家庭の中心は子どもと言ってもよいだろう。今や、親が子どもの好きなアイドルを知ってファンになり、一緒にコンサートに行くという光景も珍しくない。親が子どもに近づく形で会話を増やし、仲の良い関係を築いているようだ。

 さらに、家族は、外に対してオープンな集団になりつつあるようだ。どういうことかというと、「親しい友人は家族のようなものだと思う」と思う人がこの10年で増加。かつて強かった家意識、つまり、世間に対する家、外の顔と中の顔という二項対立は減ってきているのかもしれない。血縁か否か、同居か否かを越えて、親しく程よい距離感で人との付き合いをしているようだ。

 家族とは、かつて、生まれた瞬間から意識せずともそこにあり、一生かかわっていかねばならないものだった。だが、この30年のデータを見ると、自分が在って、他人が居て、暮らすのに理想的な関係を自ら働きかけてはじめて、家族が存在できていることがわかる。意識して家族になろうと努力しなければ家族はない、ただの他人が居るだけだ。それを、しがらみからの自由と見るか、努力は面倒だと思うかは、あなた次第だ。

 本書を読んで、社会の流れは自分と同じだと腑に落ちる人、自分は全然違うと思う人、さまざまだろう。本書は、平均的なデータからの考察なので、個別要素として拾えない部分もたくさんあるからだ。しかし、とにもかくにも、年表的には一時代の終わりだ。あなたやあなたの家族の平成30年間はどうだっただろうか?

文=奥みんす