「あなたはどうせ一生未完全」甘い言葉で変われないならドSな言葉に鞭打たれるべし

暮らし

公開日:2019/4/4

『グサっと痛いけど超やる気が出るドSな言葉』(七尾与史/すばる舎)

 やる気を出さなければいけないとき、自分で考えて動けるのは理想的だ。ただ、誰もがそうでないのも事実。なかには“誰かに発破をかけられなきゃ動けない!”なんて嘆く人もいるかもしれない。

 モチベーションを高める言葉は世の中にさまざまあるが、甘い言葉で何度も挫折してしまったという人に読んでほしいのが『グサっと痛いけど超やる気が出るドSな言葉』(七尾与史/すばる舎)。ドSな女刑事が私たちに“喝”を与えてくれる、ユニークな1冊だ。

■1の才能を努力で補えば10は無理でも8くらいになる

 本書の主人公はドSな女刑事・黒井マヤ。七尾与史氏の「ドS刑事」シリーズでおなじみの「ドSすぎる」主人公だ。後輩の刑事・代官山脩介とともに、とある殺人事件を解決していく物語パートと、彼女が伝える生きていくための格言を交互に行き来する展開となっている。

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 例えば、必死に努力しているはずなのにどうも自信が持てない人に向けて、彼女は次のようにつぶやく。

パーフェクトな人間なんて私くらいよ。あなたはどうせ一生未完全。でも1の才能を努力で補えば10は無理でも8くらいになるでしょ。

 褒めてるんだかけなしてるんだか、しかし、結果として褒めているところに彼女の愛を感じられる。

 なおも「あなたはどんな才能を持っているわけ? え、1つもない?」とたたみかける彼女は「よぉーっく考えてみなさいよ。子どもの時から得意だったことはなかったのかしら」と促し、結局は親や先輩から褒められたことを思い出して「自信を持って努力すればいいのよ」とさとしてくる。

 自信を持っちゃいけない人生なんてない。張り合いがないと思っていた毎日に、ほんの少しだけ勇気を持てるような言葉である。

■周りに助けてもらったら「なんて言うんだっけ?」

 刺激に慣れすぎると、向き合った相手に持つべき“感謝”をつい忘れそうになるときもある。そんなとき、彼女がつぶやく次のような一言を思い出すのもよいかもしれない。

私くらい完璧なら、人に感謝なんて不要よ。でも、あなたは周りに助けてもらってやっとここまできたのよね。で? そういう時はなんて言うんだっけ?

 正直なところ、言い方はいくぶんか鼻につく。のっけから「お前は何様だ?」とツッコみたくなるが、そのギャップがあるからこそ気付かされる真理もある。

 彼女が語りかけるのは、人間関係を円滑にするために必要なのは“感謝”だということだ。感謝を表す「ありがとう」という言葉があると「相手も嬉しくなるのに、自分もほっこりする」と話す彼女は、「人の役に立ってみたら、『ありがとう』って言われる人の気持ちが分かるかも」と私たちをさとす。

 日常生活ではやはり、相手への感謝を忘れないようにしようと不思議と思わされてしまう。

 さて、このほかにもさまざまな“ドSな言葉”を凝縮した本書は、声優・田村ゆかりさんの音声により耳でも楽しめるようになっている。やる気が萎えているとき、自分を奮起させるために役立ててほしい1冊だ。

文=カネコシュウヘイ